教えて!中研 養豚

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2023年のトピックス
生産者が儲かる種豚の開発・ハイコープ種豚

 JAグループが独自に開発している「ハイコープ種豚」の改良コンセプトは、「日本の消費者に選ばれる高品質でおいしい豚肉を、低コストで生産できる種豚」です。高品質な肉質生産と、生産者が儲かるように、生産性が高く低コストな養豚生産を達成するため、(1)1母豚あたりの肥育豚出荷数の向上ができること、(2)飼料費の低減ができること、(3)日本市場に最適な資質を有していることを目指して、JAグループが開発し養豚生産者へご提供しています。

養豚研究室

JAグループ開発のハイコープ種豚とは

 ハイコープ種豚は、JAグループの研究部門である全農飼料畜産中央研究所の上士幌種豚育種研究室で開発しています。取り扱いをしている品種は2つです(図1)。雌系品種「ハイコープF1種豚」の生体、雄系品種「ゼンノーD種豚」の生体およびAI用精液を取り扱いしています。生産者へは、同じJAグループの全農畜産サービス株式会社が、国内の種豚生産農場より販売しています。

図1 雌系品種(ハイコープF1種豚)、雄系品種(ゼンノーD種豚)

高品質な豚肉生産のための3つのポイント

 日本国内で生産された豚肉は、主にテーブルミートとして消費される機会が多いため、肉質が非常に重要視されるとともに、消費者の信頼が得られるよう安全性の高いものが求められます。
 JAグループではそのようなニーズにお応えできるように、豚肉生産について3つのポイント(図2)を掲げています。JAグループではこれら3つのポイントを、高いレベルで満たすことができるようにさまざまな取り組みを行っています。その中の1つ「遺伝」については、国内トップレベルの高性能なハイコープ種豚の開発に取り組んでいます。また、飼育方法の効率化、衛生対策については全農飼中研、全農家畜衛生研究所、くみあい飼料など、JAグループの関係機関連携の下、生産上の課題に対応する体制を整えるとともに、「ちくさんクラブ21」や各種セミナーなどを通じて情報発信をしています。

図2  日本国内で高品質の豚肉を生産するポイント

生産者が儲かるための種豚開発

 JAグループでは、生産者が儲かる種豚の欠かせない要素として、1母豚あたりの肥育豚出荷頭数の向上、飼料費の低減、日本市場に適した枝肉生産が、特に重要だと考えています。

特徴1 1母豚あたりの肥育豚出荷頭数の向上

 種豚の繁殖能力の改良によって、産子数そのものは増加していますが、同時に死産数も増加する傾向にあります。また産子数が増加したことにより、哺乳期の事故も若干ながら増加する例も見られます。せっかく産子数が増えても、出荷できなければ飼料費や作業費などが生産コスト増の要因となってしまいます。
 そのため、生存する産子数を増加させつつ、死産を減らせる改良とともに、母豚の哺育能力を向上させ、肉豚出荷数を最大にするための改良を実施しています。
 また、母豚が生涯にわたって活躍し続けることも、養豚生産コストの低減につながるため、連産性や、強健性についても評価を行い、優れた母豚をつくるための育種改良を実施しています。

特徴2 飼料費の低減

 飼料費は養豚生産におけるコストの約6割を占めており、肉豚の飼料利用性の形質や発育速度に関する改良は、養豚経営の低コスト化のために重要な要素となっています。特に、近年は飼料原料の世界的な需要拡大などによって、飼料価格は高止まりしています。
 ハイコープ種豚の改良では、自動飼料摂取量測定装置(写真1)を用いて雄系品種だけではなく、全品種を対象として飼料要求率、発育能力の改良に取り組んでいます。

写真1 自動飼料摂取量測定装置を用いて発育データを確認する

特徴3 日本市場に適した資質

 収益性の向上のためには生産コストの低減だけではなく、高値で販売できるかという点も重要なポイントとなります。日本の枝肉格付け市場では、流通や小売り販売における取り扱いのしやすさから、枝肉重量が適切な範囲内にあり、適度な背脂肪を有する枝肉が高い評価を受ける仕組みとなっています。令和5年1月から格付け基準が変更となり、上中物の枝肉重量範囲が3㎏引き上げられましたが、格付け基準に重量範囲があることは変わりありません。
 ハイコープ種豚の育種改良においては、日本の格付け市場に最適な肉豚を出荷できるように、種豚の外観や枝肉を確認しながら改良を実施しています。

ユーザーの『声』を形に

 ハイコープ種豚の育種改良では、国内最大規模のデータを活用するとともに、数万箇所のゲノム情報を用いたゲノミックBLUP法など、最新の育種技術に基づき個体の選抜が行われています。しかしながら、種豚の改良においては、発育成績や産子数といった数字にできる能力だけを改良すればよいわけではありません。
 飼いやすい資質といったような、実際に使用するユーザーが求める数字に表しにくいさまざまな形質を改良することも重要だと考えています。これからもハイコープ種豚の育種改良においては、ユーザーの声を種豚という形にすることで生産者が儲かる種豚を開発していきます。

写真2 生体の背脂肪厚を測定してデータを確認する
参考となる記事 ちくさんクラブ過去号から

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