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2023年のトピックス
黒毛和種繁殖牛におけるα-トコフェロールとβ-カロテン給与が自然哺乳子牛に及ぼす影響

2023年10月に開催された「第60回肉用牛研究会 福島大会」で、当室の研究「黒毛和種繁殖牛におけるα-トコフェロールおよびβ-カロテン給与が自然哺乳子牛の発育および血液成分、糞便性状に及ぼす影響」を発表しました。本号では、学会で発表した内容についてご紹介します。
笠間乳肉牛研究室

はじめに

 黒毛和種の繁殖経営では、子牛の哺育を親牛に任せる「自然哺育」と、代用乳や人工乳で哺育する「人工哺育」があります。本号では、自然哺育を対象にした研究を取り上げます。自然哺育は、代用乳費用や哺乳作業が不要で、人工哺育より低コスト、省力的な飼育方法です。

 一方、発育良好な子牛の育成には母牛の泌乳特性が大きく影響することが報告されています(Shimadaら1988、辻ら 2011)。離乳は栄養源や環境の変化などさまざまな変化が同時に加わる時期です。特に自然哺育の場合は、断乳だけでなく、母子分離や牛房移動など2つ以上の環境の変化が同時に加わり、大きなストレスを受けやすいため、離乳のストレスを軽減することは子牛の良好な発育につながると考えられます。

 舎内飼育の場合、α-トコフェロールおよび、β-カロテンの摂取量が不足することがあります。この2つの物質は抗酸化作用を持つことが広く知られていますが、この作用以外に、α-トコフェロールは、ストレスを感じると分泌されるホルモン・コルチゾールの分泌を抑制する作用、β-カロテンは腸管免疫改善作用などが報告されています。本試験では、黒毛和種繁殖牛におけるα-トコフェロールおよびβ-カロテン給与が自然哺乳子牛の発育および血液成分、糞便性状に及ぼす影響について調査しました。

材料および方法

 平均産次2.3産の黒毛和種繁殖牛34頭と子牛(雄14頭、雌20頭)を2群に区分けして、半数の繁殖牛に対して、α-トコフェロール(1,745mg/日)およびβ-カロテン(200mg/日)を分娩翌日から8週間給与しました。

 試験中給与する飼料は、当農場の慣行に従いました。その他、4週目からは子牛のみ通れる区域を設け、人工乳およびチモシー乾草を子牛に給与する「クリープフィーディング」を実施しました。

図1-1
各α-トコフェロール濃度
(左:繁殖牛の血清、中央:繁殖牛の乳汁、右:子牛の血清)
グラフは試験期間中の平均値を示した
図1-2
各β-カロテン濃度
(左:繁殖牛の血清、中央:繁殖牛の乳汁、右:子牛の血清)
グラフは試験期間中の平均値を示した
実験の概要

結果

 補給群の繁殖牛に8週間α-トコフェロールおよびβ-カロテンを給与した結果、繁殖牛の血清中α-トコフェロール濃度およびβ-カロテン濃度は対照群に比べて高値を示しました。また、乳汁、子牛の血清中の濃度も同様に補給群の方が高くなりました(図1)。

 これらの結果は、繁殖牛に対するα-トコフェロールおよびβ-カロテン給与により、乳汁を介して子牛への両ビタミン供給量が増加したことを意味します。

母子分離および離乳ストレスの低減

 9週目の対照群および補給群の子牛の血清中コルチゾール(ストレスホルモン)濃度は哺乳期間中の値に比べ増加しました。一方、9週目の補給群の子牛の血清中コルチゾール濃度は対照群より低くなりました(図2)。この結果から、母子分離および離乳により子牛のストレスは増加しましたが、繁殖牛に対するα-トコフェロールおよびβ-カロテン給与により子牛のストレスが軽減したと分かります。

 また、子牛の体重は8、9、12週目の補給群の値は対照群より高値を示しました(図3)。8週目に離乳したので、補給群の子牛の体重は離乳前から高まり、離乳後もその効果が持続したと考えられます。

 子牛の糞中水分含量には群間差は認められませんでした(図4)。したがって繁殖牛に対するα-トコフェロールおよびβ-カロテン給与は子牛の糞便性状に影響しませんでした。

図2 子牛の血清中コルチゾール濃度 グラフは試験期間中の平均値を示した
図3
子牛の体重の推移
グラフは雌雄混合したときの平均値を示した
図4 子牛の糞中水分含量 グラフは試験期間中の平均値を示した

まとめ

 試験結果により、繁殖牛に対するα-トコフェロールおよびβ-カロテン給与は、乳汁を介して子牛にα-トコフェロールおよびβ-カロテンを供給し、母子分離および離乳によるストレスを緩和する可能性が示されました。繁殖牛を自然哺育かつ舎内で飼育する場合は、α-トコフェロールおよびβ-カロテンの栄養状態を調査して補給してみてはいかがでしょうか?

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