松浦牧場×プリン専門会社×こゆ野菜カフェ×アリマン乳業
濃厚で風味の良い、美味しい牛乳 地域とともに、愛される松浦牧場

2021.10

宮崎県新富町の松浦牧場は、質の良い牧草を与えることで健康な牛を育て、濃厚で風味の良い牛乳を生産し、注目を集めている。手がけているのは、松浦千博さん(35)。留学したアメリカで学んだ酪農経営の知識と経験を活かし、飲食店や消費者に積極的にアプローチ。牛に優しく地域に愛される牧場づくりを目指すチャレンジャーだ。

地元乳業メーカーとつくる濃厚で風味の良い「まつうらみるく」は、4月に発売しさっそく人気を集めている。

いのちを継承 良い牛乳は土づくりから

松浦牧場の牛乳を使った商品を提供する「こゆ野菜カフェ」の店長の永住美香さん(右)とスタッフ

 宮崎県新富町は宮崎県中部に位置する。松浦牧場は畜産や茶栽培が盛んな同町西側の台地の畑に囲まれた環境にある。
松浦牧場の理念は「いのちを継承し、その循環を大切にします」。「良い牛乳は土づくりから。栄養価の高い牧草は健康な乳牛を作る。風味は餌で変わり、餌は土に左右される。良い土が良い餌を育む」と考え、牧草は32 ha(自作地12haと借地20ha)で栽培。牛糞を2カ月かけてたい肥化し、畑に投入している。完熟たい肥はにおいがほとんどしない。

 自慢の牛乳を知ってもらうため、宮崎県中小企業家同友会に参加し、飲食店などと交流を深めてきた。牛乳を提供し、調理した感想やその料理をお客さんに提供した時の反応などを聞く。交流が奏功し、「濃厚で美味しい」「風味があり飲みやすい」などの評判が口コミで広まった。

 都農町のプリン専門会社の社長との出会いもあった。濃厚でスッと後味が消えるプリンを目指す中、松浦さんの牛乳を使って、2019年3月に「南国プリン」を発売。今では新富町のふるさと納税の返礼品となり、人気商品となっている。同時期に新富町の商店街にある「こゆ野菜カフェ」では、松浦牧場の牛乳を使った「本気カフェオレ」「タピオカミルクティ」の提供をスタート。ホットで飲むと牛乳の甘さとコクが引き立ち、とにかく美味しいと人気を集めている。

 カフェを経営する永住美香さんは「松浦牧場の牛乳は美味しさが違う。上品で美味しい。風味も違う。秘密が牧草を育てる土にあると聞いて感動した。こうした努力を消費者に伝えたかった」と松浦牧場の牛乳の魅力を話す。

 「牛乳そのものを味わいたい」という要望に応え、今年4月、オリジナル牛乳「まつうらみるく」が誕生した。65度で30分間の低温殺菌ノンホモジナイズ(脂肪球を均一にしない)製法だ。低温殺菌することで、タンパク質の変性を防ぎ、搾りたての生乳に近い風味と味わいが特徴だ。

 商品化できたのは、地域の乳業メーカーのアリマン乳業がクラウドファンディングを活用して資金を集め、3月に小ロット(20~50ℓ)で低温殺菌できる機械を導入したため。アリマン乳業が、松浦牧場などこだわりの牛乳を生産している酪農家の声に応えたもので、クラウドファンディングには宮崎県のファンを中心に全国から104人が支援した。

 この機械を使って4月から「まつうらみるく」の製造が始まった。こゆ野菜カフェでは6月から予約販売を始め、店内で牛乳の提供もしている。「これまで牛乳が飲めなかった人も〝これなら飲める〟とファンになった人もいる」と永住さんは話す。

カフェで人気の「本気カフェオレ」
4月から「まつうらみるく」の販売を始め、カフェ店内でも提供

地域に溶け込んだ牧場経営 ストレスを与えない飼育

 松浦さんは牧場の2代目経営者だ。高校卒業後に米国カリフォルニア州の大学に留学した。帰国したのは2010年。口蹄疫によって74頭を失った直後だった。

 家族と再建を探る中、留学中にインターンシップで働いていたイリノイ州の牧場のことが思い浮かんだ。その牧場は、日本と同等の規模(60頭ほど)で、牛乳の生産から加工、販売まで一貫して行い、更に小中学生を対象にした食育活動にも熱心だった。観光用の牛と触れ合う牧場ではなく、実際に搾乳出荷する牧場で、子どもたちが牛と触れ合える場づくりに注力。スイーツを販売したり、ワイナリーとイベントやジャズの演奏会を開いたりするなど地域にも溶け込んでいた。「とても感銘を受けた。目指す牧場はこれだ!と思った」と振り返る。

 再建は出産2カ月前の乳牛を30頭購入することからスタートした。妊娠した牛が安定期に入っていることや、環境に慣れさせてお産のストレスを少しでも軽減させることを考慮した。

 現在、経産牛90頭、育成牛50頭を飼養する。年間搾乳量は758t(2020年)で、搾乳はパイプライン方式。牛にストレスを与えないように、つなぎ飼育する。夏季は暑さ対策で細霧ミストを設置し、南国・宮崎の猛暑下でも牛は快適に過ごせる。これによって夏場の繁殖率が改善し、乳質も下がらなくなった。

 労働力は松浦さんと妻、父と母、従業員2人の計6人。留学時の経験でスタッフの分業制を取り入れるなど、働きやすい経営を心がけている。また、松浦牧場の取り組みが地域で知られるようになったことで、地元の新聞や放送局が取材に来るようになり、スタッフの意欲が増してきたという。

 松浦さんは、改めて「牛乳の可能性を感じ、もっと多くの人に牛乳を飲んでもらいたいと思うようになった」という。

牛糞を2カ月かけてたい肥化した完熟たい肥はにおいがほとんどしない
牛乳の良い風味のカギとなる栄養価の高い牧草を含んだ餌
搾乳はパイプライン方式で行う
夏季は暑さ対策で細霧ミストを使用

食育で広がる輪 命の循環を伝える

 食育活動にも熱心に取り組んでいる。搾乳や子牛の餌やり体験とともに、隣接する家のテラスを活用して、酪農の話をしたり、バターづくりや牛乳の試飲を行ったりしている。乳幼児向けにキッズルームもある。1日1組に限定し、気兼ねなく体験できるのが特徴だ。

 今年3月には中央酪農会議から「酪農教育ファーム」の認証を得た。松浦さんは「子牛が生まれて、搾乳ができる。元気な乳牛から美味しい牛乳ができる。命の循環がここにある、ということをしっかり伝えたい」という。10月3日には地元でウォークラリー「新富グルメマラニック」が開かれた。休憩ポイントとなる松浦牧場ではアイスクリームを提供し、参加者に好評だった。

 品質面でも力量を発揮している。九州生乳販連が主催する「生乳品質共励会」では2019、20年度の2年連続で優秀賞(ベスト30)に選ばれた。月2回(年間24回)の定期検査データをもとに行われる共励会。「今まで取り組んできたことの成果だ。今度は最優秀賞をぜひ取りたい」と意気込む。

 就農して10年が過ぎ、地域の中での存在感が徐々に高まる中、8月には宮崎県が主催する「みやざき次世代農業リーダー養成塾」の塾生となった。塾は県農業をけん引する、優れた経営感覚を備えた若手農業者を育てるもので、経営理念や戦略、経営計画づくりなどを学ぶ。

 松浦さんは「酪農を基軸にさまざまなイベントを開いている。目標は定まっており、農場を継承した後、法人を立ち上げたいと考えている。経営や雇用を学ぶとともに、規模拡大や法人化のメリット、利益の出せる経営を学びたい」と次の夢を描いている。

松浦さん家族と従業員2人。働きやすい環境づくりで若い世代の従業員を確保している
食育にも注力し、パンフレットも幅広い世代に関心を持ってもらえるようなデザインにしている
県主催の次世代農業リーダー養成塾で経営を学び、法人化など次の夢を描く松浦千博さん

〔生産者(取材・撮影協力)〕
松浦牧場 宮崎県児湯郡新富町新田16597−2

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