JAながさき県央養豚部会×Aコープ店(株)×JA全農ながさき×ジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社
地域に愛される「ながさき健王豚(けんおうとん)」豚肉の〝地産地消〟が定着

2022.08

 長崎県のJAながさき県央養豚部会は、少数精鋭で「ながさき健王豚(けんおうとん)」を愛情込めて育て、地元に愛されるブランドとして定着させた。「諫早で生まれ諫早で育ったブランド豚」をコンセプトに、「まろやかで風味豊かな美味しさ」「豚肉の〝地産地消〟」を諫早市民らにアピール。

 生産が始まって17年、生産者とJAながさき県央・Aコープ店をはじめとするJAグループが一丸となって、養豚振興と消費拡大に取り組んでいる。

「ながさき健王豚」の厚切りロース

上質な甘み、きめ細かい肉質 Aコープ店で定番の人気商品

充実した品揃えが人気のAコープ内の精肉売り場

 「ながさき健王豚」は、深みのある味わいと上質な甘みが特徴だ。肉質はきめ細かく、脂身はさらっと軽く後味がさっぱり。なべ物やしゃぶしゃぶなどのさまざまな料理に合う。

 諫早市の住宅街にあるJAながさき県央Aコープ西諫早店の精肉売り場は、夕方近くになると「ながさき健王豚」を買い求める客でにぎわう。比較的高齢者が多い地域ということもあり、ロース(しゃぶしゃぶ、生姜焼き用)、肩ロース(トンカツ用)、もも(炒め物用)の人気が高い。同店の豚肉取り扱い量の8割は「ながさき健王豚」で、同ブランドだけで年間1000頭(Aコープ店舗全体で約3200頭)を取り扱う。佐藤正和副店長は「食べれば美味しさが分かる。味が全然違う。脂に甘みがあり、特有のにおいがない。ブロックで買う人も多い。今後はトレーの色を変えて高級感を出して売っていきたい」と自信をもって話す。

 長崎市にあるAコープレストラン長崎店では、「ながさき健王豚」を使った健王豚野菜炒め定食、カレー、健王豚生姜焼き定食、かつ丼、かつカレーが定番メニューとして並ぶ。長崎港に面した観光スポットに位置していることから、「長崎の味が手軽に味わえる」と観光客にも好評だ。

売り場でもひと際目を引く
「ながさき健王豚」の精肉パック
地場産を消費者にPRする取り組み
JAながさき県央Aコープ西諫早店
副店長の佐藤正和さん

健康に育った「豚肉の王様」 美味しさの鍵は独自飼料

豚の管理を行う東川伸太郎さん
トウモロコシをメインにした配合飼料「健王ブレンド」

 「ながさき健王豚」は〝すくすくと健康に育てられた豚肉の王様〟という意味があり、文字通り、「衛生的な環境で、安心して食べてもらえるよう、健康に育てる」ことを使命としている。

 全農のハイコープSPF豚から生まれたブランド豚で、大ヨークシャーとランドレースの交配種とデュロックを掛け合わせた三元豚だ。

 美味しさの鍵は、ジェイエイ北九州くみあい飼料㈱がJA・生産者の要望に応えて開発した独自飼料、米を配合した「健王ブレンド」にある。トウモロコシをメインに、飼料用米と小麦を配合している。「豚がよく育ち、肉締まりが良くなるように工夫している」と同社の担当者は説明する。

 また、育てていく上で課題となるのが、病気と事故の対策だ。同社は、全農家畜衛生研究所クリニックセンター九州分室やJAなどの関係機関と連携し、農場の衛生検査を進めている。離乳舎での子豚の事故防止や、肥育豚の病気の早期発見と対策が重点だ。衛生検査は獣医師が夏、冬に農場を訪れて、採血、採糞、鼻汁採取などを行い、豚の状態を診断して生産者にアドバイスする。また、農場衛生プログラムの見直しを目的とした検査も進めている。

JAながさき県央畜産課長の山口敏郎さん(左)
東川農場の東川健治さん(中央左)
ジェイエイ北九州くみあい飼料係長の石橋慶一さん(中央右)と
東川農場を担当する同くみあい飼料の原田享汰さん

地域養豚の維持へ 4戸で年間約8000頭出荷

養豚部会について語る部会長の東川健治さん
東川健治さん(左)と息子の伸太郎さん

 JAながさき県央養豚部会は、農家戸数や、飼養頭数が減っていく中で、打開策を探ろうと2003年に発足。2005年にハイコープ豚の導入と「ながさき健王豚」のブランド名が決まり、スタートした。現在、4戸が年間約8000頭を出荷している。

 諫早市北部、山の中腹に、同部会部会長、東川健治さん(61)が経営する東川農場の豚舎がある。息子の伸太郎さん(36)と2人で、種雄豚3頭、母豚90頭、計1000 頭を肥育する。年間出荷頭数は約2000頭だ。出荷までの日齢は180日齢、出荷体重115kgまで肥育し出荷している。

乳に吸いつく子豚たち
離乳舎の外観
もみ殻が敷き詰められた肥育舎。
豚たちも心地よさそうに寝転ぶ

 豚の飼育方法、衛生管理、疾病予防対策は、ジェイエイ北九州くみあい飼料やJA全農からの指導を受けている。スリーセブン方式導入もその一つ。スリーセブン方式はオールイン・オールアウトを目的としたグループ管理手法の一つで、東川さんは母豚を7グループに分け、3週間間隔で交配、分娩、離乳をする。母豚1グループは13頭、1頭あたりの産子数は14~15頭。人工授精開始で、産子数が増加したが、グループ管理ができるため、里子がしやすくなった。また、種付け・分娩・離乳が集中するため管理がしやすく、作業者の休みを確保できるというメリットがある。

 東川さんは「豚の下痢や肺炎には注意しています。子豚は離乳までが最も大事。肥育でいかに事故を無くすかも重要です」という。そのため、肥育豚舎はもみ殻を40cm敷き詰めている。木々に囲まれ直射日光が当たりにくい構造で、大型換気扇が回り、風通しが良く、鳥よけの網も備えている。元気よく過ごす姿を見ながら、「豚にとって快適な環境を心がけています。事故率も低下しました」という。豚糞は農場内でたい肥化し、販売している。

知名度は年々上昇 SNSも活用

 「ながさき健王豚」の地元での知名度は、JAながさき県央や養豚部会などの活動によって年々高まっている。諫早地方農業まつり「実りのフェスティバル」では、焼き肉の試食・販売を実施。子どもを持つ若い家族連れに人気だ。コロナ禍で2年間開催されていないが、終息後には再開し、アピールすることにしている。

 昨年は、オリジナルの法被をリニューアルした。消費宣伝でどこにいても目立つようにと、赤色を採用。背中には「諫早生まれ、諫早育ちのながさき健王豚」を大きくデザインしている。味を知ってもらう取り組みも進めている。諫早市役所の食堂は、地産地消スペシャルメニュー「ながさき健王豚の黒酢酢豚と諫早タマネギのステーキ」を提供し、好評だった。同市のふるさと納税の返礼品としても扱っている。またJA役職員に斡旋し、月1回、購入を取りまとめて発注。取引先や関係機関の協力もあり、夏、秋の2回、地産地消企画を行っている。

揃いの法被に身を包んだ様子
昨年まで養豚部会長を務めていた山本義則さん

 今年は取り組みをパワーアップした。Aコープが初めてエフエム諫早の放送で、「ながさき健王豚」をPR。JA畜産部も同じくPR企画を行う予定だ。SNS(会員制交流サイト)の活用も始める。JA(広報担当者)は、1月から農畜産物を写真動画投稿アプリ「インスタグラム」にアップしているが、今後、「ながさき健王豚」の画像や動画もアップする予定だ。諫早産の農畜産物ファンのフォロワーから「いいね」が増え、消費が伸びることを期待している。9月には西九州新幹線(長崎新幹線)開業に併せたキャンペーンも検討している。

 ブランド立ち上げから17年。昨年まで6年間、養豚部会長を務めていた山本義則さん(63)は「健王豚は旨味成分である“オレイン酸”の測定や食味検査を重ね、みんなで立ち上げたブランド豚。脂身は白くて甘味があり、肉質はきめ細かくてやわらかく、しっとりしてツヤがある豚肉に仕上がっている」と自信を持つ。「豚肉の美味しさは確かだ。消費者にもっと積極的にPRし、ファンとなってほしい」と期待している。

【取材協力店】

JAながさき県央Aコープ西諫早店 長崎県諫早市山川町1-5 TEL.0957-26-7783

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