JA全農 家畜衛生研究所
肉用鶏農場における冬場の温度管理の改善事例について

2022.10

 外気温の影響を受けやすい開放型の鶏舎では、気候に合わせて換気方法や保温方法を適切に調整しないと生産成績に大きな影響を与えてしまいます。今回は肉用鶏農場における冬場の飼養管理、特に温度管理の重要性についてご紹介いたします。

管理の難しい開放鶏舎

 この数十年で養鶏場の大規模化が進み、それにともない大型のウインドウレス鶏舎も増えてきました。ウインドウレス鶏舎は密閉性が高く、換気管理を機械で制御できるため、外気温の影響をあまり受けずに年中一定の温度で鶏を飼うことができます。一方、開放型の鶏舎は外気温の影響を受けやすいため、季節ごとに換気方法や保温方法を適切に調整しなくてはいけません。温度管理に失敗すると生産成績が顕著に低下することがあります。

 そこで今回は、冬場に生産成績が低下する肉用鶏農場において、飼養管理の見直しのみで成績を大幅に改善した事例をご紹介いたします。

農場の問題点

図1. 4日齢のチックガード内の様子(赤外線カメラ)
図2. 15日齢のチックガード内の様子(赤外線カメラ)

 本農場は冬場の生産成績が低く、育成率は90%以下、出荷体重も3.0kgを下回ることが多々ありました。

 鶏舎の中は寒く、敷料の泥濘化が多くの鶏舎で見られたので、原因探索のため、くみあい飼料の営業担当者とともに環境調査を行いました。

 環境測定は当年3月に実施し測定時の外気温は12℃でした。

 図1は、4日齢(舎内温度約20℃)でチックガード内の様子を赤外線カメラで写した画像です。保温状態が悪いため、ブルーダーの真下は40℃近くあるにもかかわらずまわりの敷料は20℃もありません。

 図2は15日齢(舎内温度約20℃)でチックガード拡張後の様子です。鶏舎壁側が寒いため鶏が広がらず、ブルーダーの真下に固まったままです。

写真1. 46日齢の鶏舎。敷料の泥濘化が進んだ様子
写真2. 67日齢の鶏舎。敷料が泥濘化

写真1は、46日齢(舎内温度約16℃)の鶏舎の様子です。敷料の泥濘化が進んでいます。特に壁側が酷く、それを避けようとして鶏舎中央に鶏が固まっていました。

 写真2は、67日齢(舎内温度約15℃)の鶏舎の様子です。鶏舎全体が泥濘化し、鶏の休息場所がなくなっています。

 環境測定の結果、飼養期間を通して一般的な肉用鶏の適正舎内温度を下回っていたことが分かりました。このような環境状態であったため、鶏の状態も悪く出荷体重は3.0kgに達していませんでした。

飼養形態: 開放鶏舎
飼養羽数: 約35,000羽(約3,000羽/鶏舎)
飼養期間: 初生ビナ〜約70日齢まで

冬場に敷料の状態が悪くなってしまう原因

 暖かい空気が冷えた物体に触れると、表面に結露が発生します。これは水蒸気を多く含んだ暖かい空気が冷やされることによって水蒸気を保持することができなくなり、液体の水として現れてしまうからです。この現象は敷料においても見られます。鶏舎の壁から侵入した冷気が暖かい敷料に当たると敷料表面が冷え、そこに触れた空気中の水蒸気が露になります。結果的に敷料が濡れてしまい、泥濘化につながります。このことから敷料の泥濘化を防ぐためには鶏舎内、特に敷料を冷やさないことが重要になってきます。

鶏舎の保温力を高める

 鶏舎内を効率的に保温するためには、壁と鶏の間に空気の層を作ることが必要となります。

 換羽完了(約35日齢)までは農業用ビニールを用いて鶏を囲いました(写真3)。壁側は二重カーテン構造とし、空気の層を作ることで保温効果を高めます。暖気は天井近くにたまるため、扇風機で空気を撹拌します。これにより舎内温度、敷料温度を安定して30℃以上に保つことができるようになりました。

 また、チックガードの拡張は鶏舎壁際まで一気にせず、ビニールカーテン内で行うよう変更しました(写真4)。壁側のビニールカーテンはチックガード拡張時に移動できるように、3段階のレールを作成しています(写真5の①、②、③の順)。換羽完了(約35日齢)を目安に鶏舎入口側のビニールカーテンを撤去し、ガードを最大まで拡張します。このほかにも1日2回行っていた鶏舎巡回を、鶏をこまめに動かすために4回に増やしたほか、敷料の追加や切り返しを適宜行うようにしました。

写真3. 二重カーテンで空気の層を作った様子
写真4. ビニールカーテン内でチックガードを拡張
写真5. 3段階のレールで可変性をもたせた

対策後の状況

 表1は飼養管理改善後の生産成績です。改善に取り組んだ冬は、出荷体重・育成率ともに過去最高の成績を出すことができました。今回の対応で飼養管理の重要性を理解していただき、農場全体の管理レベルが底上げされました。その結果、それ以降も同等の成績を維持しています。

 冬場の生産成績が振るわない場合、問題を解決するには根本的な原因を探る必要があります。ワクチン接種や投薬を行っても成績が改善しない場合は、一度飼養管理面に穴がないか確認することを推奨します。

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