「冬場を迎えるにあたって」
冬場対策:子牛の寒さ対策について

2022.10

※「中研」はJA全農飼料畜産中央研究所の略称です。

 子牛は体重あたりの体表面積が大きく、脂肪も多くありません。また、被毛による断熱効果が薄く、反すう胃での発酵熱が少ないことなどから、成牛に比べ寒さに弱い状態です。寒さが子牛のエネルギー要求量に与える影響と、冬場の子牛の寒さ対策についてご紹介します。

笠間乳肉牛研究室

寒さが子牛のエネルギー要求量に与える影響

 被毛や皮下脂肪の厚さなどにも影響を受けますが、子牛が最も快適な温度域は、3週齢までの子牛で、15~25℃、3週齢以上の子牛で5~25℃とされています。この温度域を下回る(あるいは上回る)と、体温を維持するために余分にエネルギーを消費しなければならず、子牛のエネルギー要求量は増加していきます(表1)。
 20℃の環境下と比較した場合、0℃の環境下では、3週齢未満の子牛で38%、3週齢以上で18%も余分にエネルギーを必要とすることになります。寒ければ寒いほど必要なエネルギー量が増え、増体に悪影響を及ぼします。しっかりと寒さ対策を行いながら、寒冷期には代用乳の給与量を増やす、油脂を多く含む高TDNの「ミルスター」を使用するといった工夫で、不足するエネルギーを補うことができます。

子牛の寒さ対策

 ジャケット着用やヒーターの活用など、子牛の寒さ対策にはさまざまな方法がありますが、当室ではポリタンクを代用した湯たんぽを活用した保温対策も行っています(写真)。ポリタンクに60〜70℃のお湯を入れ、写真のようにハッチ内に入れて子牛を保温します。生まれて間もない子牛や、体調の優れない子牛等に使用します。1ハッチ内にポリタンクを4つまで置くことができますが、お湯の温度が高い間は、低温ヤケドをする可能性があるため、必ず子牛にカーフジャケットを着せ、少し隙間を空けてロープで倒れないように固定してください。
 寒い外気から守るためには豊富な敷料も欠かせません。敷料の量(深さ)を考える指標の1つとして、ネスティング・スコア(nesting score)が提唱されています(Lago et al.,2006)。ワラなどを使用してしっかり「巣ごもり(nesting)」できるようにすると、子牛は外気から身を守ることができます。床からの底冷えを防ぐためにも、冬場は敷料の量を増やして子牛を寒さから守りましょう。
 寒さ対策を考える上では、子牛に当たる風の強さも重要です。子牛に直接風が当たらないようカーテンやコンパネで風よけを作り、壁からの隙間風が当たっていないか等もチェックしましょう。一方で、完全に牛舎を閉め切ったままにしておくと、蓄積したアンモニアが気道粘膜にダメージを与え、呼吸器病の原因となります。冬場であっても一日の中で時間を決めてカーテンを開けるなど、定期的な換気が必要です。

写真1 湯たんぽを利用した保温対策
写真2 子牛が横になると敷料で肢が隠れて見えない(スコア3)

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