「2022年のトピックス」
乳牛 搾乳ロボット飼養管理における牛の行動とルーメン性状

2022.12

 搾乳ロボット飼養では、牛ごとに搾乳タイミングが異なり、搾乳ロボット内で個別に配合飼料を給与するなど、独特の管理方法が取られます。今回は、搾乳ロボット飼養管理での牛の行動と、ルーメン性状に及ぼす影響についてご紹介します。

笠間乳肉牛研究室

搾乳ロボット飼養管理での牛の行動

 搾乳ロボット飼養は、牛の行動にどのような影響を及ぼすのでしょうか? 当室では、搾乳ロボット牛舎で飼養されている牛の行動観察を実施し、採食(※1)・飲水・横臥(おうが)・反すう・搾乳に分類して行動時間を調査しました(表1)。

 従来のフリーストール・パーラー搾乳管理で報告された行動時間(Grant, 2007)と比較すると、搾乳ロボット飼養管理では搾乳にかかる時間が大幅に短いことが分かりました。パーラー搾乳では同じタイミングで全頭搾乳するため、待機時間を含めた搾乳時間が長くなりやすいのに対し、搾乳ロボットは牛ごとに自由なタイミングで搾乳することができます。そのため、短時間で搾乳を完了できたと考えられます。一方、その他の採食・飲水・横臥・反すう時間には、搾乳ロボット飼養管理での明確な特徴は見られませんでした。

搾乳ロボット飼養管理での採食行動とルーメンpH

 搾乳ロボット内で、短時間のうちに配合飼料(ロボット飼料)を摂取することは、ルーメンpHを低下させアシドーシス(ルーメン内のpHが酸性になる症状)を引き起こすことが懸念されます。当室では、先ほどの行動観察とあわせて、牛のルーメンpHを経時的に計測し、採食行動ごと(PMR摂取とロボット飼料摂取)のpH変化の違いを調査しました。

 その結果、採食行動後4時間までのルーメンpHに、採食行動による違いは見られませんでした(図1)。また、訪問1回あたりのロボット飼料摂取量と、その後のルーメンpHの間には“負の相関”があることが分かりました(図2)。このことから、一度にロボット飼料を摂取しすぎると、ルーメンpHが低下しやすくなると考えられましたが、採食行動ごとのルーメンpHの変化には差がないことから、ロボット飼料摂取自体がPMR摂取と比べてルーメンpHを顕著に下げる要因にはならないことが示されました。

※1. 採食時間は、群全体に給与した混合飼料(Partial Mixed Ration; PMR)摂取時間と、搾乳ロボット内での配合飼料摂取時間を合計。

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