~全農家畜衛生研究所~
常在化する鶏伝染性気管支炎(IB)JP-Ⅲ型対応のワクチンを開発

2023.02

IBの概要と対策

 鶏伝染性気管支炎(以下、IB)は、コロナウイルス科のIBウイルスによる鶏の病気であり、全国の養鶏場で常在化しています。IBに感染した鶏は、呼吸器症状や腎炎等の多様な症状を示し、農場の生産性を悪化させ、大きな経済的被害をもたらします(表1)。

 養鶏場でのIB対策には、鶏群のオールイン/オールアウト、アウト後の鶏舎の水洗・消毒・乾燥の徹底、適切な飼養衛生管理に加え、IBワクチンを使用します。ただ、IBウイルスには多くの「変異株」が存在するため、各変異株に対応するワクチンを選択しなければ、十分な防御効果は期待できません。全農家畜衛生研究所が行った近年のIBウイルス流行株全国調査では、JP-Ⅲ型の検出率が最も高いことから、JP-Ⅲ型への対策強化が急務です(図1)。

写真1. 製品の外観

JP-Ⅲ型のIB生ワクチン

 全農家畜衛生研究所では、JP-Ⅲ型流行株に対応するIB生ワクチン『IB生「科飼研」JPⅢ』(写真1)を開発し、㈱科学飼料研究所から製品化・発売しています。本製品は、飲水・点眼・散霧の中から農場の状況に合わせて投与方法を選択できます。投与後も鶏の増体率に影響せず、免疫付与後は速やかに体内から消失する高い安全性が特長です。

 本製品の有効性に関する成績を紹介します。

 本製品を点眼投与した鶏に、JP-Ⅲ型流行株(以下、攻撃株)をそれぞれ人為的に感染させて呼吸器症状を評価した結果、ワクチン投与区ではいずれの攻撃株に対しても呼吸器症状が顕著に改善しました(図2)。このことは、本製品が鶏に付与した免疫によって、鶏の体内で攻撃株の増殖を抑制したためであり、本製品の高い有効性を示しています。

 また、IBウイルスの変異に関連するS1遺伝子について、本製品のワクチン株(千葉株)と近年のJP-Ⅲ型流行株は非常に高い一致率であることからも、本製品がJP-Ⅲ型の対策に有効であることが期待されます。

まずは検査で株の把握を

 農場の生産性向上のためには、自農場に侵入しているIBウイルスがどのような株か把握する必要があります。現在、IBウイルスの株の把握はS1遺伝子型別検査で可能です。近年野外で検出率が高いJP-Ⅲ型流行株に対して高い有効性を示す本製品は、全国の養鶏場のIB対策にご活用いただけます。なお、本製品は要指示医薬のため、使用に際しては農場の管理獣医師にご相談ください。

お問い合わせ

(株)科学飼料研究所 動薬部

TEL:027-347-3223

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