鶏の壊死性腸炎は、レイヤーやブロイラーを問わず発生し、農場経営に重大な影響をもたらす疾病です。今回は、対策をいくつか組み合わせることで、被害を抑えた事例をご紹介します。

原因菌と発生メカニズム

写真1. 壊死性腸炎の鶏群で見られた血便

写真2. 解剖時に見られた腸の充血・膨満した腸管

 壊死性腸炎の原因菌である「クロストリジウム・パーフリンゲンス」は、鶏の腸管に住む常在菌の1つですが、他の病原体との混合感染やストレスによって異常に増殖し、下痢や血便、食欲不振、重篤な感染の場合は死亡につながります(写真1、2)。

 その壊死性腸炎の発生に関わる主な病原体がコクシジウムです。コクシジウムの鶏への感染は虫卵(オーシスト)の経口摂取により起こり、腸管の損傷を引き起こして「クロストリジウム・パーフリンゲンス」の増殖を誘発します。感染した鶏が排泄する糞便にはコクシジウムの虫卵が含まれており、感染鶏が排出した糞便を取り込むことで同居鶏にも感染が広がってしまいます。

 壊死性腸炎は気温と湿度が高くなる夏季に発生しやすいのが特徴です。高温多湿になる時期では、糞便に含まれる虫卵の成熟も早くなり、感染が拡がりやすくなるといわれています。全農家畜衛生研究所クリニックセンターの検査結果では、気温が高くなる5月頃から秋頃までコクシジウムの陽性率が上昇する傾向が見られます(図1)。

対策の徹底を!

 壊死性腸炎対策では、まず発生要因となるコクシジウムの鶏舎への持ち込みに注意を払うことが重要です。糞便などを事前に検査した上で導入することが望ましいとされています。

対策1 飲水場や飼槽の糞便による汚染を防止

 ブロイラーや平飼いの農場では、鶏が自由に動けることから飲水場や飼槽が糞便によって汚染されやすいため、鶏舎内で感染が広がりやすく注意が必要です。定期的に飲水受けや飼槽の掃除、濡れやすい部分の敷料の交換を行うことが対策のポイントです。

 レイヤー農場、特にウインドウレス鶏舎においては、餌樋(どい)の上段の鶏の排泄物が入っていないか定期的に巡回することや、集糞ベルトを稼働させる回数を増やしてコクシジウムの虫卵を含んだ鶏糞を鶏舎内にためないことが大切になります。この際、ベルトは必ず1回転させるようにします。半回転だと糞便が乗っていた面を鶏がつついてしまい感染が拡大する可能性があります。

対策2 洗浄や消毒の徹底により発症を防ぐ

 コクシジウムの厄介な点として、消毒薬や乾燥に強い抵抗性が挙げられます。このため、空舎期間に鶏舎を洗浄する際にはこびりついた鶏糞やホコリなどを丁寧に取り除き、熱湯を用いた洗浄を行います。

 その後、散布する消毒剤には、コクシジウムの虫卵に効果があるオルソ剤を使用し、消毒薬を作用させる十分な時間の確保が大切です。それでも鶏舎の床のヒビ割れや鶏舎の隅など洗浄しにくい箇所には虫卵が残ってしまうことがあります。そのような場合は、仕上げとして石灰乳を塗布することで、残っている虫卵を覆ってしまう効果が期待できます。そのほか、感染前にワクチンを使用することで予防する方法もあります。

対策3 ストレスを低減し鶏の腸内環境を整える

 また、春から夏にかけての温度や湿度の急激な上昇、風が鶏の体に直接あたるなどの環境、産卵開始時期のストレスも壊死性腸炎を発症させる要因となります。早めの夏場対策やストレスの少ない飼養管理、日常の健康観察の徹底の他、腸内細菌叢を整えるための生菌剤の活用も有効です。

農場での対策事例

 ある農場では、育雛場で110日齢まで自家育雛した後に、多段式ウインドウレス鶏舎の成鶏舎に移動していました。育雛場ではロットごとのオールインオールアウトは実施していたものの、洗浄や消毒が不十分で洗い残しがあるのか、成鶏舎導入時の検査でコクシジウム陽性が続いていました。特に梅雨の時期に成鶏舎へ移動したロットで、移動後しばらくして壊死性腸炎が多発して死亡率が増加する傾向が見られました。そこで、成鶏舎に移動後の壊死性腸炎対策として図2の内容を提案しました。

 その結果、対策後の梅雨から夏季にかけても壊死性腸炎の発生が見られたものの、前年と比較してへい死率が減少したことから、換羽時までの通算の生存率が上昇し(図3)、産卵率低下も軽度になりました。現在、更なる改善を目指して育雛場の洗浄・消毒方法の見直し等の対策を検討しています。

 壊死性腸炎の発生をなくすことは難しいですが、いくつかの対策を組み合わせることで被害を軽減することが可能です。家畜衛生研究所では各農場の問題把握と状況に合わせた対策を提案していますので、管轄のJA・経済連・くみあい飼料・県本部にご相談ください。

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