全農養鶏セミナー2023 
鳥インフル予防策や鶏卵の需給動向学ぶ

2023.10

JA全農は2023年9月11~30日にかけて、「全農養鶏セミナー2023」をオンライン形式で配信しました。全国で300名以上の方々に参加いただき、誠にありがとうございました。ここでは配信したセミナーの概要についてご紹介します。

1 直近の飼料原料情勢

全農 本所 穀物外為課 課長 鮫嶋 一郎
全農 本所 蛋白原料課 課長 小野 哲也
とうもろこし

 ここ数年、とうもろこし相場の高値が続いていますが、直近のシカゴ相場は下落傾向にあります。その理由は、①中国による輸入量の増加の勢いが、一時期ほどではなくなっている②ウクライナからの輸出が、海上輸送は制限されているものの、貨車による陸送やドナウ川をはしけで航行することで継続されている③アルゼンチン産は不作だったものの、ブラジル産は豊作だった④米国産新穀は、作付面積、単収とも増加する予測であり、需給が緩んでいる――ことが挙げられます。とうもろこし相場以外にも、為替や海上運賃による影響が注目されます。

大豆粕

 大豆粕の相場予測は、今後の米国産大豆の生育状況が最大の材料となります。直近は中西部の乾燥懸念による作柄悪化予想から単収が下方修正されており、大豆粕相場も一進一退を繰り返しています。近年は大豆油の需給や価格に大豆粕相場が左右される局面が増えています。バイオディーゼル向けの需要をはじめとする世界的な植物油需給も注視していく必要があります。

2 鶏卵の需給動向と今後の見通し

JA全農たまご株式会社 東日本営業本部 第1営業部 鶏卵課 課長代理 進藤 暁
供給面

 2022~23年の高病原性鳥インフルエンザ(以下、HPAI)の影響を受けて、約12%の採卵鶏が殺処分され生産量も大幅に低下しました。今後の復帰状況をシミュレーションすると、6月に生産羽数は底を打ち、7月より順次回復に転じると見込んでいます。生産量も23年12月頃には同年6月と比較して、1カ月あたり約1万9千t近く増加すると推定しています。また、5月以降、日本への鶏卵輸入も一定続いております。

 23年は異常事態なので、生産量の予測は難しいですが、当社の飼養羽数からの推計値では235万t、1~5月度の成鶏用飼料の動向を加味した場合、23年の生産量は244万t程度の推定です。このため、23年の生産量は240万t程度と想定しています。

需要面

 コロナの影響から脱却し、消費は元の形に戻りつつある一方、これまでHPAIの影響から供給を抑えていた需要を取り戻していかなければ、需給のバランスが大きく崩れてしまう可能性があります。そのためにも外食産業での卵メニュー再開や、卵を使用したプロモーション、インバウンド消費や、卵の需要が伸びる市場の取り込みなど、業界全体で需要回復に向けた取り組みが必至です。

3 鳥インフルエンザの発生予防策

全農 家畜衛生研究所 クリニック北日本分室 獣医師 松井 薫
ウイルスを持ち込まない対策を!

 HPAIは22~23年シーズン、26道県で84事例が発生し、約1771万羽が殺処分対象となりました。発生時期が早期化・長期化し、発生都道府県数、事例数、殺処分羽数のいずれも過去最多となりました。23~24年シーズンも、同様の発生リスクが考えられます。過去、HPAIは11~3月頃までの5カ月間の発生でしたが、10~5月の8カ月間、半年以上警戒する必要があります。

 発生を抑えるためには「鶏舎にウイルスを持ち込まない対策」をこれまで以上に強化する必要があります。①野生動物の侵入防止対策②人の出入り時の防疫対策の徹底―が特に重要となります。野生動物対策については、今の時期から、鶏舎内外の点検・修繕を入念に行い、侵入および接近を防止することが必要です。関係者全員でHPAIの発生防止に取り組んでください
(詳細は本誌P37をご参照ください)

株式会社科学飼料研究所 獣医師 大石 勝彦
効果的な防疫対策資材の活用を!

 鶏舎の消毒剤として広く活用されている逆性石けん系消毒剤「ロンテクト」は、水酸化ナトリウム等でアルカリ化することで、低温下でも消毒効果を高めることができます。また、発泡化させることで、病原体の接触時間を長くすることも非常に有効です。消毒薬1つでも使い方によって効果を高めることが可能です。

 疾病対策として農場に石灰を散布しますが、石灰は雨水や二酸化炭素に反応して、炭酸カルシウムとなり、著しく消毒効果が減少します。しかし、見た目にはその違いは分かりません。そこで、「リトアクア」を1滴添加すると、消毒の有効性があるpH12以上であれば青色、有効性が急激に低下するpH11以下では赤〜赤紫色となり、一瞬で判断が可能となります(詳細は本誌37ページ)。消毒薬などの衛生資材は工夫次第で効果を高め、管理しやすくすることが可能です。

4 養鶏トピックス

全農 本所 推進・商品開発課 村越 勇人
全農グループの鶏糞低減飼料

 全農グループの鶏糞低減飼料はUseful Nature Kind(便利で・自然に・優しい)の頭文字をとってUNKシリーズと呼んでいます。17年より販売を開始し、現在では年間20万t以上を供給しています。UNKシリーズは、鶏が消化できない飼料中の繊維含量に着目し、消化性の良い原料を、積極的かつバランスを重視して配合するとともに、厳選された酵素剤を配合することで、相乗効果で高い鶏糞低減効果を得られるのが特徴です。利用した多くの農場で、生糞で20%以上、乾物で10%以上の減少を実感。また、過剰な飲水を抑える効果があるため、糞中水分が低下し、汚卵の減少や、ブロワー電気代削減など副次的な効果も表れています。UNKシリーズの導入にあたって、事前にお近くのJA・経済連・くみあい飼料担当にご相談いただき、費用対効果のご検討をお願いします。

全農 飼料畜産中央研究所 養鶏研究室 獣医師 宮川 将司
産卵データの解析から見えた鶏種ごとの産卵性能の変化

 JA全農飼料畜産中央研究所では採卵鶏・ブロイラー飼料中の栄養水準や飼養管理方法の研究開発、鶏卵や鶏肉の品質に関する研究開発を行っています。今回は、育種改良にともなう白玉鶏あるいは赤玉鶏の産卵性能の変化についてご紹介します。

 今回は02~22年に研究所で飼養した白玉鶏・赤玉鶏計49鶏群を対象として、その産卵成績を餌付年度ごとに解析しました。その結果、18~22年に餌付した鶏群では、特に産卵期の後半の産卵率の持続性の改善が目覚ましく、卵重も安定しやすい傾向にありました。また産卵期前半に関しては特に飼料中の栄養への反応性が増加しており、今までの同一の飼料の栄養水準では不足するような結果が見られました。また卵質についても、特に卵殻強度で目覚ましい改良が認められました。

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