JA全農 家畜衛生研究所
クリニック検査を活用したPCV2対策

2023.10

 豚サーコウイルス関連の疾病は子豚の被害が特に大きく、農場経営に重大な影響をもたらします。今回はクリニック検査を活用することで、事故の低減につながった事例をご紹介します。

豚サーコウイルス感染による農場への影響

 サーコウイルス2型(PCV2)はほとんどの農場に存在しますが、離乳後多臓器発育不良症候群(PMWS)や豚皮膚炎腎症症候群(PDNS)などの豚サーコウイルス関連疾病(PCVAD)を引き起こすことがあります。PCV2は免疫を抑制する作用があることから、豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRSウイルス)など、その他の病原体と混合感染した際に、主に離乳後の子豚において増体悪化や削痩(さくそう)、事故率上昇など大きな被害をもたらします。
 表1に示した農場は母豚90頭規模の一貫農場で、1月ごろから子豚事故が増加し、治療を試みたものの効果が見られず、被害の拡大が止まらない状況でした。4月に対応依頼を受けて検査を実施したところ、母豚のPCV2抗体価のばらつきと、1~5カ月齢全ての月齢でPCV2ウイルスを検出しました。特に1カ月齢で多量のウイルスが検出されたことから、子豚事故急増の原因はPCV2と考えられました(表1)。

表1.PCV2-PCR検査 ウイルス検出量の推移

事故率上昇の原因究明と対策

 当該農場ではPCV2対策として子豚のワクチン接種を行い、日常的に洗浄・消毒を行っていましたが、被害が拡大しました。原因調査の結果、当該農場の課題は、①適切な日齢でのPCV2ワクチンの接種と、②PCV2ウイルスに有効な消毒薬の選択・使用と考えられました。ここでは、被害を防ぐための2つの対策をご紹介します。

対策1 ばらつきのない移行抗体とワクチン接種のタイミング

 子豚のPCV2ワクチンは、適切な日齢で接種することが重要です。ワクチン接種が早すぎると移行抗体によるワクチンブレイク(※)が生じる一方、遅すぎると移行抗体が切れて容易に感染するからです。移行抗体の抗体レベルは母豚の抗体量に依存しています。全ての子豚が十分なワクチンの効果を得るためには、子豚の移行抗体レベルをそろえること、つまり母豚のPCV2抗体レベルをそろえ、それを初乳の確実な摂取により子豚に付与することが求められます。

※ワクチンを接種したのに効果が発揮されず、感染すること

当該農場のケース

子豚事故増加の原因

ワクチン接種日齢の遅れ
母豚:PCV2抗体価にばらつきがみられた
→子豚の移行抗体レベルのばらつきとワクチン接種前に移行抗体が切れてしまったことで、ウイルス感染・子豚事故の増加につながったと考えられた

対策

子豚:離乳時接種(21日齢)に変更し、接種日齢を早期化
母豚:PCV2ワクチン一斉接種を5月に実施

結果

8月の検査では母豚の抗体価のばらつきが減少(図1)
→母豚へのワクチン接種は、その後も年2回(春・秋)一斉接種を継続

図1.母豚におけるPCV2抗体価の分布

対策2 適切な消毒薬の利用と消毒強化

 消毒の効果を十分に得るには、標的とする病原体に対して適切な消毒剤を選ぶことが重要です。
 当該農場では母豚のワクチン一斉接種とヨード系消毒剤の使用・空間消毒の実施による消毒方法の改善により、11月の検査では特に被害が大きくなりやすい母豚、1~3カ月齢の子豚にウイルスは検出されませんでした。農場の迅速な対応により、出荷頭数も対策開始から約半年で例年の出荷頭数並みに回復することができました(図2)。

図2.出荷頭数の推移
当該農場のケース

ウイルス拡大の原因

PCV2を不活化できない逆性石鹸を洗浄消毒に使用していた

対策

PCV2に有効とされているヨード系消毒剤によるオールアウト時の洗浄消毒に加え、日に1回の空間消毒を主に子豚舎と繁殖舎で実施し、消毒を強化

結果

11月の検査では特に被害が大きくなりやすい母豚、1~3カ月齢の子豚からウイルスが検出されないくらいにきれいになった

定期的な全体検査の実施を

 今回の事例では検査を通して原因を特定できたこと、事故の起こっているステージだけではなく、農場全体での疾病の流れを確認できたことから早期に対策を打つことができました。特にPCV2のように抗体レベルによってワクチン接種時期などを調整する必要がある疾病は、農場で実際に被害を感じたタイミングには既に農場全体に広がってしまっていることが多くあります。被害が拡大する前に目に見えない疾病の動きに対応するためにも定期的な全体検査の実施が重要となります。
 このような年2回以上の定期的なモニタリング検査を通して、疾病状況に合わせた対応をご提案することができます。さまざまなワクチンや消毒剤がある中で、より農場に必要なものや使い方を確認するためにも、定期的な検査の活用をご検討ください。

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