ジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社
SGSで飼料コスト低減 耕畜連携で飼料用米活用

2023.10

 ジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社は、管内の堆肥を処理・活用するため、熊本県阿蘇地区で飼料用米の委託生産を始めた。生産された飼料用米を同社の大分工場で稲子実発酵飼料(ソフトグレーンサイレージ=SGS)に加工し、飼料コスト低減を目的として養牛生産者へ供給。供給農家からは飼料費の低減となることから、高い評価を受けている。

 耕畜連携の取り組みは、堆肥を有効活用して飼料用米を製造し、配合飼料および輸入粗飼料の価格高騰が農家経営を圧迫する中、少しでも安価な飼料を提供するため2020年にスタートした。飼料稲わらについても国産自給飼料として活用を開始した。

 大分工場は鶏豚用飼料専用工場だがSGSを製造するため、粉砕機などを新たに導入。

 当初はSGSの発酵にばらつきがあったが、乳酸菌と水をまんべんなく添加できるよう改善し、品質が安定した。今年度は福岡と長崎の肥育農家に500t超を供給する計画だ。

 同社執行役員の中垣裕二大分工場長は「配合飼料の価格が高止まりしており、少しでも農家負担の軽減に貢献したい」と話す。

稲子実発酵飼料(ソフトグレインサイレージ=SGS)

概要

収穫した飼料用米を乾燥させずにそのまま粉砕し、フレコンなどに密閉保存してサイレージ化(乳酸発酵)させたもの。

ここがイチオシ

  • 乳酸菌を添加するため嗜好(しこう)性が高く、消化率も向上
  • 長期保存が可能
  • 配合飼料を10~20%置き換えることが可能

ジェイエイ北九州くみあい飼料株式会社 大分工場

  • 本 社:福岡県福岡市中央区那の津5-3-1
  • 設立年:昭和42年7月
  • エリア:山口、福岡、大分、長崎、佐賀、熊本の6県
  • 工 場:福岡、大分、長崎、熊本
  • 従業員数:220人

大分工場

  • 所在地:大分県速見郡日出町大字川崎字浜田5969-10
  • 生産能力:鶏豚用=1カ月6,500t
          SGS=1日5.4t
  • 従業員数:23人
大分工場

配合飼料の半額程度 オレイン酸の数値も向上

SGSについて話し合うJA北九州ファームの西部長㊧と石井課長

 JA北九州ファーム株式会社の八木山牧場は、従業員4人で乳雄560頭を飼養する。飼料コストを抑えるため、2021年からSGSを試験的に給与。配合飼料で飼養した場合と比べて枝肉成績に差がなかったため、昨年3月から全頭給与をスタートした。出荷するまでの13カ月間、配合飼料の15%をSGSに置き換え、1日900kg、月30t弱を給与する。

 乳酸菌が添加されているため嗜好(しこう)性が高く、食いつきが良いという。生産管理部の西正寿部長(八木山牧場農場長)は「生産コスト低減と国産の飼料用米ということで安心感もある。近年求められているオレイン酸の数値も高まり、メリットは大きい」と高く評価する。

 SGSを食べて育った牛は、「やきやま高原ビーフ」として、県内のスーパーで販売され、脂身の少ないヘルシーな赤身と肉本来のうまみが人気を集めている。

JA北九州ファーム八木山牧場の皆さん

飼料用米の稲わらも活用 子牛の生産費低減へ

 ジェイエイ北九州くみあい飼料は生産基盤を維持・強化するため、今年度から直営で繁殖事業も開始した。繁殖農場では、配合飼料より粗飼料を多く必要とする。配合飼料の高騰とともに価格が上昇しているのが粗飼料だ。飼料米の生産拡大にともない、同社では低コスト粗飼料の活用を目的に稲わらの収穫も始めた。

 同社養牛課の石井聖計課長は「今後SGSの供給先を5軒程度に増やし、有用性を確立したい。肥育農家の経営に貢献するとともに、稲わらまで有効活用し、繁殖農場で生産される子牛の生産費低減にもつなげたい」と抱負を語る。

1日3袋(計900kg)を給与

JA北九州ファーム株式会社 八木山牧場

  • 本社:福岡県福岡市中央区那の津5-3-1
  • 主な事業内容:家畜の飼育と生産販売、堆肥の生産販売と畜産生産資材の開発と販売
  • 特徴:ジェイエイ北九州くみあい飼料の子会社として、福岡・大分・熊本に直営農場を持ち、“安心・安全でおいしいお肉”をお届けしています!

 八木山牧場

  • 所在地:福岡県飯塚市八木山
  • 飼養頭数:乳雄560頭
  • 従業員数:4人
  • 独自ブランド:「やきやま高原ビーフ」として県内の「にしてつストア」などで販売
八木山牧場

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