畜産経営における現在の環境は、資材価格の高騰、重大家畜疾病の流行、労働力不足など厳しい状況に置かれています。こうした事業環境の変化をふまえ、JA全農では生産者支援の強化・拡充を進めていくため、各地域にJAグループの技術者が「全力サポートチーム」として結集し、生産性向上に資するメニューを実証する「生産性向上全力サポート」に取り組んでいきます。今回は本事業概要について紹介します。

1 生産性向上全力サポートとは?

 生産性向上全力サポートでは、生産性向上のテーマとして①予防衛生②暑熱・環境対策③生産性改善―を設定し、各テーマに即した生産性向上メニューをラインナップしました。また、各地域にJA・経済連/くみあい飼料・全農クリニック獣医や研究所技術者らで「全力サポートチーム」をつくり、各生産者のニーズに合った生産性向上メニューを提案していきます。

 このプロジェクトに参画する生産者は、生産性向上の実証モデル農家として、全力サポートチームと協力しながら、農場環境調査や飼養管理の実践、生産成績の記録など、農場の課題に応じた生産性向上メニューに取り組んでいただきます。

2 サポートメニューの具体例

①予防衛生

 畜種ごとに全農クリニック獣医らによる農場調査・衛生検査を実施し、疾病事故の原因調査、衛生対策および栄養改善など調査結果に基づいたフィードバックを提案します。

実証モデルの具体例

代謝プロファイルテストを活用した繁殖母牛の栄養管理

 母牛の栄養不良は不受胎の原因となるだけでなく、子牛の発育成績にも悪影響を及ぼします。「代謝プロファイルテスト」とは、牛群の栄養状態を評価する手法の一つです。検査結果に基づき栄養のアンバランスを整えることで、牛群全体の生産成績改善を目指します。

② 暑熱・環境対策

 全力サポートチームによる農場の環境調査を行い、暑熱環境下での生産課題の発見・改善方法(対策資材・サービス)について提案します。

実証モデルの具体例

暑熱期の受精卵移植(ET)のメリット

 夏場は暑熱ストレスによって、不受胎、周産期病の増加、分娩事故のリスクが高まります。ETは体外培養によって初期受精卵の暑熱ストレスを回避することができ、夏場の繁殖不良の改善にメリットがあります。

図2 受精卵の暑熱ストレスのイメージ
図3 暑熱期のホルスタイン種経産牛の受胎率

③生産性改善

 全力サポートチームによる生産成績実態調査・飼養管理の課題を調査し、農場での改善点の発見、農場に合わせた改善モデルの提案を行います。

実証モデルの具体例

「はつらつモウラック」による移動ストレスの低減

 導入直後の牛は、移動や飼料摂取の制限など各種のストレスを受けており、家畜市場での上場体重と農場着地体重に大きな差があります。「はつらつモウラック」に含まれるビタミンとアミノ酸の効果により、体重減少を抑制し、その後の体重回復も促進することが可能となります。

3 最後に

 今後は、環境問題やアニマルウェルフェアへの対応など新たな社会的課題への対応も求められ、生産者個人の努力ですべての課題に対応することが難しくなっていきます。JAグループでは、これまで以上に多様化・高度化するニーズに対応するため、「生産性向上全力サポート」を通じた生産性向上メニューを提案します。この取り組みによって得られた成果や実証事例を全国に広く普及していくことで、生産者の持続可能な経営の実現につなげてまいります。

 「生産性向上全力サポート」はJAグループの総力を挙げた取り組みです。すべての関係者のご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。

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