効果的な予防対策を徹底しよう
高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)シーズン到来!
2025.10
2024-25シーズンのHPAI発生状況(図1)
24-25シーズンの家きん農場で発生した高病原性鳥インフルエンザ(以下、HPAI)は、2024年10月17日に北海道で初発事例を確認し、04年以降で最も早い時期の発生でした。また、日本国内での発生も5シーズン連続となり、シーズン終了までに14道県で51事例が発生し、発生事例数は過去3番目の多さになりました。
当シーズンにおける特徴は、①3県の家きん農場集中地域における発生が32事例と全体の約63%を占めること②過去に発生を経験している農場における再発や20万羽以上の家きんを飼養する農場で多いこと―が挙げられます。

野鳥では24年9月30日に北海道のハヤブサでHPAIの感染を確認して以降、25年6月25日時点で19道県227事例が確認されています。このことから24-25シーズンは全国的に長期間にわたり、家きん農場へのHPAIウイルスの侵入リスクが極めて高い状態にあったと考えられました。
世界の発生状況に目を向けても、今後も発生は継続すると考えられることから、25-26シーズンも10月以降、渡り鳥とともにHPAIウイルスが国内に侵入すると考えられます。すべての農場で対策を行う必要がありますが、特に農場密集地域や過去に発生した農場ではリスクが高いと考えられ、入念な対策が必要です。
渡り鳥の飛来状況は、東北地方・伊豆沼での観測数がピークに達するとともに、渡り鳥が日本全国に到着していることが示されています。12月には西日本・九州においても飛来数が増加していました(図2)。25-26シーズンも早い時期に対策を行うことが肝要です。

野鳥におけるHPAI発生状況の可視化の取り組み
HPAI対策を進める上で、ウイルスを国内に持ち込み拡散するリスクのある野鳥での、HPAI発生状況を把握することは重要です。環境省は、野鳥におけるHPAIの監視活動を行っており、発生状況をホームページ上で公開しています。
全農家畜衛生研究所ではこのデータを基に、いつ、どこに、どんな野鳥でHPAIが確認されたのかを可視化したものを、JACCネットで公開しています。これらから、渡り鳥から伝播したウイルスを農場に持ち込むリスクのあるカラスについて、注意が必要であることが分かります(図3)。

冬季の消毒効果を高める工夫
HPAIウイルスは消毒薬に弱いですが、冬場の低温環境では消毒薬の化学反応が鈍り、効果が著しく低下してしまいます。この課題には、消毒薬のアルカリ化が有効です。「フィーネナチュラル FNPパウダー」を消毒に使う逆性石けんへ添加してください(図4)。溶液がアルカリ性になることで、低温下でも安定した消毒効果を発揮します。冬季こそ確実な消毒を実践し、ウイルスの侵入を阻止しましょう。

野生動物の侵入を徹底的に防ぐ
野鳥やネコ、イタチなどの野生動物は、HPAIウイルスを農場内に持ち込む主要な媒介者と疑われています。野生動物の侵入を許すことは、ウイルスを鶏舎に招き入れることに近いと思われます。防鳥ネットや金網に破れや隙間がないか定期的に点検し、速やかに補修しましょう。
壁の穴や換気扇の開口部も重要な侵入経路です。また、鶏舎周辺の除草や清掃を徹底し、野生動物が寄り付かない環境を作ることが不可欠です。物理的な防御と環境整備の両面から農場を守りましょう。

ウイルスを鶏舎に持ち込まないことが最も効果的な予防対策です。ヒト、モノ、野生動物が鶏舎にウイルスを持ち込んでしまう危険因子であることを強く認識し、防疫徹底によりウイルスの侵入を防ぎましょう。
鶏舎への野生動物侵入防止の取り組み
〜調査・対応事例のご紹介〜
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