マーケット情勢(全農畜産総合対策部・9月まとめ)
2025.10
各畜種の家計消費量・家計消費金額は総務省家計調査より
豚肉
7月の全国豚と畜頭数は、1,281千頭と前年を下回った(前年比97.7%)。地域別では関東、近畿、中四国、九州・沖縄で減少が目立った。
7月の輸入通関実績は、豚肉全体で82.8千t(前年比96.0%、前月比98.8%)。内訳は、チルドが34.2千t(同122.8%、同106.7%)、フローズンが48.6千t(同83.2%、同93.9%)となった。輸入相手国別では、チルドはカナダ、米国が増え、フローズンはブラジル、米国が増えた。
総務省発表の7月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり豚肉購入数量は1,729g(前年比101.6%)、支出金額が2,824円(同103.7%)となった。
8月の東京市場枝肉卸売価格(速報値:8月31日時点)は、668円/kg(前年比87.3%)と前年を大きく下回った。8月は、酷暑の影響から肉豚の成育遅れなどにより国内出荷頭数が伸び悩んだ。一方で、一部量販店での輸入豚肉へのシフトや夏休み期間での学校給食休止の影響等から国産豚肉の需要が減少したため、需給が大きく緩み、前年・前月ともに下回る結果となった。
9月も全国的に30℃を超える残暑が続くことが想定され、肉豚生育への影響が継続する可能性が高い。さらに、学校給食の再開や3連休および翌週の飛び石連休への対応等から需給が引き締まることが予測されるため、相場は強含みを見込む。
【令和7年10月の相場予想】※東京市場 上物・税込650円


牛肉
7月の成牛と畜頭数は、99.1千頭(前年比99.1%)と前年並み。和牛が53.0千頭(同103.8%)、交雑牛が22.8千頭(同101.0%)、乳牛去勢が9.2千頭(同80.9%)となった。
7月の輸入通関実績は、全体で46.9千tと前年を下回った。(前年比95.1%、前月比111.1%)。チルドが17.1千t(同90.6%、同121.2%)、フローズンが29.8千t(同97.9%、同106.1%)となった。
総務省発表の7月度家計調査報告によると、全国二人以上の1世帯当たり牛肉購入量は438g(前年比106.6%)、支出金額が1,588円(同102.2%)となった。
8月の東京市場枝肉卸売価格(速報値:8月31日時点)は、和牛去勢A5が2,333円(前年比101.3%)、A4が2,063円(同104.4%)、交雑去勢B3が1,568円(同100.3%)、乳牛去勢B2が1,136円(同107.5%)であった。和牛・交雑牛共に消費者の節約志向が継続している中で、酷暑の影響から例年よりBBQや焼肉需要が伸び悩んだ。乳牛去勢は、輸入牛肉の代替需要が継続しているようだ。
9月の相場は、和牛は、消費者の節約志向が継続すると想定されるものの、出荷頭数の減少が予想されていることから需給が引き締まり強含みを見込む。交雑牛は、和牛代替需要は継続するものの出荷頭数の増加が想定されるため、横ばいの見通し。乳牛去勢は、横ばいと見込む。
【令和7年10月の相場予想】※東京市場 税込
◎和牛去勢A4:2,150円 ◎交雑去勢B3:1,600円 ◎乳牛去勢B2:1,150円



鶏卵
7月の餌付け羽数は、全国で9,040千羽(前年同月比107.4%)となった。
7月の鶏卵の一人当たり家計消費量は、気温上昇による食欲減退や高卵価による落ち込みが予想されたが、899g(同107.4%)と前年を上回った。
8月の東京相場Mサイズ基準値平均は310円/kg(同+93円/kg、前月比-19円/kg)となった。供給面において、猛暑の影響が続き産卵率と個卵重が低下したが、お盆期間の大きな需要減退により一時的に産地在庫に余剰がみられた。需要面においては、猛暑で需要減退が見られ、量販筋は特にお盆期間で発注数量が減少傾向だったが、お盆明け以降徐々に回復傾向にある。外食筋では大手ファストフードチェーンのプロモーションに備えた集荷が始まり、強い引き合いが見られた。加工筋では、前月同様定期中心の取引となり、スポット集荷の依頼は落ち着きを見せている。
今後について、供給面は残暑の影響で産卵率と個卵重の低下が続く見込み。需要面において、量販筋では、一部ディスカウントストアやドラッグストアを中心に売価が下がっている影響により、発注数量が増加傾向となることが予想される。外食筋では、大手ファストフードチェーンから引き合いがより強くなる見通し。加工筋では一部でスポット集荷が見込まれるものの、定期取引の集荷が中心となることが想定される。以上のことから、相場は需給次第ではあるが、サイズ間調整となることが考えられる。


鶏肉
生産・処理動向調査によると、7月の推計実績は処理羽数63,155千羽(前年比103.8%)、処理重量187.4千t(同102.6%)となった。処理羽数が前月時点の計画値から1.6%の上方修正、処理重量も1.1%上方修正となった。産地からは暑さの影響で鶏の食欲が低下し、増体不良による歩留まりの低下や内臓廃棄が増加しているという報告が多かったが、処理羽数・重量共に前月時点の予測を上回り、前年同月比でもプラスの結果となった。
7月の鶏肉(原料肉)の輸入量は前月から-3.3千tの48.2千t、国別ではブラジルが前月-2.5千tの32.0千t、タイが-0.7千tの15.9千tとなった。
7月末時点推定期末在庫では国産31.3千t(前年比88.2%)、輸入品124.1千t(同92.9%)、合計で155.4千t(同91.9%)となった。
8月の月平均相場は、モモ肉778円/kg(前月差-25円)・ムネ肉568円/kg(同+13円)正肉合計で1,346円/2kgと前月差-12円、前年同月差+374円となった。
8月の生産状況は入雛羽数・処理羽数・処理重量は前年比増の見込み。相場については、モモ肉は、量販店が輸入品の販売にシフトしていること、国産の店頭売価改定による販売不振が影響し、徐々に下げ傾向となってきている。ムネ肉は4月以降、依然高止まりが続いている。量販店での店頭売価改定で、他畜種の比較的安価な商品への売り場シフトが見受けられる。一部、国産鶏モモ肉解凍商品を販促する店舗も見受けられる。
今後の相場は、モモ肉は9月以降も需要が回復するまでは右肩下がりの傾向が続き、ムネ肉は一部輸入品に代替えしている加工メーカーもあると聞くが、550円/kg前後で推移すると予測する。
【令和7年10月の相場予想】 ◎モモ肉:740円 ◎ムネ肉:540円


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