堆肥生産の解説
家畜ふんの堆肥化と飼料用作物への施肥ポイント
2026.01
家畜ふんは、微生物分解が容易で不安定な有機物を多く含みます。不安定な有機物を、そのまま畑に投入すると急激に微生物が増殖して、根をいためます。このようなものを微生物が分解することで、安定した有機物を主体とした資材に変化させることを「堆肥化」といいます。今回は家畜ふんの堆肥化と飼料用作物への施用のポイントについて、解説します。
1 家畜ふんを堆肥化させる際のポイント
通気性の確保と空気の供給
家畜ふん中の有機物の分解は主に酸素を必要とする微生物が担うため、通気性の確保が重要です。家畜ふんを均一に堆肥化させるには、材料の攪拌(切り返し)によって強制通気をして、有機物分解を進行させるために微生物への十分な空気の供給を確保します(図1)。

通気性が確保できる材料の水分調節
生ふんの状態では水分量が多いため、堆肥化させる材料の水分を低減させ、通気性を確保する必要があります。一般的にはふん尿にオガクズやもみ殻、あるいは戻し堆肥などを混合して水分調節します。目標水分は60~70%程度です。容積がわかっている10~20ℓバケツなどの容器に、堆肥化する資材を入れて重量を量り、資材の容積重を評価する方法があります。容積重が0.6kg/ℓを下回れば目標水分に達していると判断できます。一方で、堆肥化過程で過剰な乾燥が生じ水分不足になると、微生物の活性が低下し、有機物分解が進まないため、水分を補給する必要があります(図2)。有機物分解の進行の目安として、堆積して数日以内に材料が高い温度(60℃ぐらい)に到達しない場合は、水分調節がうまくできていないことが考えられるので、材料の混合の段階から再度やり直すことをお勧めします。

堆肥化に必要な期間
堆肥化に必要な期間は、攪拌(切り返し)が十分であれば、資材の温度が上昇しなくなるまでです。しかし、切り返しが不十分なために、温度が上昇しなくなる場合が多々あり、堆肥化の完了を見極めることは難しいところです。そこで、堆肥化に必要な期間として3カ月程度、バークなど木質物との混合が多い場合には6カ月程度が目安とされています。
2 家畜ふん由来堆肥の肥料成分特性
牛ふん由来堆肥に比べて、豚ぷん由来や鶏ふん由来の堆肥のほうが、作物への肥料成分が多く含まれています。反すう動物である牛には濃厚飼料に加えて牧草など繊維質な粗飼料が与えられるため、牛ふん由来堆肥は分解が容易でない有機物を多く含みます。ただし、家畜ふんと共に使われる副資材に応じて堆肥の分解の難易は大きく変動します。
作物への養分供給
堆肥中に含まれる窒素は、大部分が有機物の形態なので、土壌微生物の働きで分解無機化されることで作物が吸収できるようになります。従って、化学肥料に対する相対的な肥効率は、概して、牛ふん由来堆肥で30%、豚ぷん由来堆肥で50%、鶏ふん由来堆肥で60%となります。一方、リン酸とカリについては大部分が無機態として存在しているので、肥効率はほぼ100%です。
これらの肥効率を加味して、堆肥中の肥料三要素成分の含有構成比率を示したのが図3です。牛ふん由来堆肥でカリの比率が高く、豚ぷん由来と鶏ふん由来の堆肥でリン酸の比率が高い特徴があります。一方、飼料作物の含有構成比率を図4に示しました。堆肥は作物に比較して、窒素が少なく、リン酸が多い構成となっています。従って、堆肥だけでは、作物が必要とする養分バランスに合わせることができません。
堆肥には、窒素、リン酸、カリだけでなく、作物生育に必須な微量要素も含まれています。いくつかの微量要素については化学肥料として施用される機会が少ないので、貴重な供給源となります。

3 家畜ふん由来堆肥の施用効果と適正施用
家畜ふん由来堆肥が土壌に混入すると、堆肥に含まれている有機物に応じて、土壌の有機物含量が高く維持されるようになります。地力窒素が高い土壌となり、土壌の団粒構造の発達を促し、通気性、透水性および保水性が適度な土壌となります。この土づくり効果は重要です。
一方、家畜ふん由来堆肥には、前述した作物の肥料成分が含まれているので、土づくり効果を重視しすぎて大量に施用すると、養分過剰な飼料を生産し、家畜の体調不良を引き起こす危険があります。
硝酸過剰による酸素欠乏
家畜ふん由来堆肥に含まれる有機物は、施用された土壌中で急激に分解無機化し、飼料作物中の硝酸態窒素濃度を高めることがあります。この飼料の牛への給与は、赤血球中のヘモグロビンの酸素運搬機能を阻害し酸素欠乏を生じさせる危険があります。
カリ過剰によるグラステタニー
家畜ふん由来堆肥の過剰施用でカリの投入量が多くなり、飼料作物のミネラルバランスを崩し、家畜にグラステタニーを引き起こすことがあります。
堆肥施用は過剰とならないように、具体的には、堆肥中の肥料三要素のいずれかが施肥基準を超過しないようにして、他の不足する要素を化学肥料で補うことが推奨されます。

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