「夏場対策のポイント」
夏場の肥育豚舎の環境改善

2022.06

 暑さに弱い豚にとって、高温多湿の日本の夏は最も辛い時期といえます。“正しい”とされる夏場対策をしていても、必ずしも成功するとは限りません。夏場対策を成功させるためには、自分の農場に合った対策が必要です。まずは、農場の環境をよく調査することが大切です。

養豚研究室

豚舎の環境調査のポイント

 6~8月は1年の中で枝肉相場が最も高くなる時期であるため、この時期に夏場対策をしっかりと行い肥育成績を維持できれば、大きな利益を生むことが可能です。

 肥育豚舎の最適な温度は15~18℃であり、これを超えると暑熱ストレスによる食欲減退、発育遅延、飼料要求率の悪化等の悪影響が生じます。暑熱ストレスを軽減させるための方法はいくつかありますが、まずは現状の豚舎の環境を把握し、問題点を洗い出した上で対策を検討することが有効です。

写真1
最高最低温度計(気温の確認)
写真2
熱線風速計(風速の確認)
写真3
発煙管(空気の動きの確認)
写真4
気体検知管(気体の濃度の確認)

 豚舎の環境を構成する要因のうち、気温、風速、空気の動き、二酸化炭素及びアンモニア濃度は比較的容易に測定できます(写真1~4)。

 気温及び風速は「体感温度の指標」、二酸化炭素及びアンモニア濃度は「豚舎内の換気ムラや換気量の指標」となります。各項目の測定部位は基本的に豚と同じくらいの高さで、測定箇所は豚舎全体に一定の間隔で複数点定めます。測定時には、豚舎の構造が分かる図面を用意し、カーテンやファンの位置を事前に確認しておきましょう。

環境調査を基にした暑熱対策

 実際の事例を紹介します。豚舎は約250頭を収容できるウインドウレスの肥育豚舎で、壁面の排気ファンから排気し、天井の入気口から入気する陰圧換気です。天井裏にはファンとクーリングパッドが設置されています。この豚舎では、夏場の暑さと空気の悪さが問題となっていました。気温、風速、空気の動きは図1の赤丸の地点で、アンモニア濃度は緑丸の地点で測定しました。

 その結果、南側の豚房で風速が弱く空気がよどんでいること、さらには西側に行くほど気温が高くなることが分かりました。この結果を受け、排気ファンを確認したところ、ほこりよけネットが目詰まりしていることが判明したため、洗浄を行いました。また、豚舎内でも比較的涼しい東側豚房を中心に使用し、西側豚房を使用する場合は飼養密度を低くするようにしました。

 このように、現状の豚舎環境を調査することで、問題点を見つけ、対策を考えることができます。建設当時は問題がなくても、時間の経過とともにファンの故障等によって実は思うように換気ができていなかったという場合もあるため、改めて自分の農場の環境を調査し、夏場対策を実施してみてはいかがでしょうか。

図1
豚舎環境の測定箇所

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