「冬場を迎えるにあたって」
冬場対策:豚舎内におけるネズミ対策

2022.10

 ネズミは病原体の伝搬だけでなく、食害や排泄により豚舎設備に被害をもたらします。特に冬場の豚舎内は外より暖かく、餌も豊富にあるため、ネズミの楽園となります。ネズミは気温低下とともに豚舎内へ侵入するため、冬を迎える前の今の時期からネズミ対策を行いましょう。 

養豚研究室

ネズミの種類と棲息(せいそく)場所

 豚舎で見かけるネズミは主にドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミの3種類が知られています(表1)。

表1 ネズミの種類と生態

 ネズミ対策は、①侵入経路や隠れ場所をなくす②モニタリング③毒餌や罠の設置の流れで行います。

①豚舎の外からの侵入経路や隠れ場所をなくす

 豚舎内にネズミが侵入しないように対策することが重要です。豚舎の壁や天井裏の穴、扉下の隙間などの侵入経路を塞ぎ、侵入可能な隙間をなくしましょう。豚舎まわりは草刈りを行い、ネズミが棲息しにくい環境を作ることも大切です。また、豚舎内外に放置された不要な物品はネズミの住み処となるため、こまめな整理整頓を行い、ネズミが隠れる場所をなくしましょう。

②豚舎内におけるネズミのモニタリングを行う

 ネズミの種類によって行動範囲は変わるため、適切な防除計画を立てる上でモニタリングは非常に重要です。

 表1、2を参考に豚舎内の見回りを実施し、ラットサイン(糞などのネズミの痕跡)はないか確認します。特に冬場、ネズミは暖かい天井裏を好むため、忘れずに点検をしましょう。モニタリングを行う際は、同時に清掃も実施し、次回の点検時に糞などの新しい痕跡を見逃さないように心がけましょう。ある農場では、半月に一度モニタリングを行い、新たなネズミの痕跡がないか確認します。ネズミを捕獲した際は、種類や場所の情報共有を行い、こまめに対策を講じることでネズミの防除に成功している事例もあります。非常に手間のかかる作業ですが、自分たちでモニタリングすることで防除費の削減だけでなく、農場でのノウハウの蓄積にもなりますので、ぜひ取り組んでみてください。

表2 チェックシートの例 モニタリングの際に便利
写真1  人目のつかない隙間やネズミの 通り道に設置する

③毒餌、捕獲罠を設置する

 モニタリングにより、豚舎内にネズミがいると判明した場合、毒餌や捕獲罠の設置が必要になります。毒餌を使用する上で最も重要なことは、ネズミに食べてもらうことです。農場ごとにネズミの好みは異なるため、毒餌の配合に工夫が必要ですが、一般的に殺鼠剤と豚用飼料、お菓子、砂糖、食用油などを混ぜて作ります。ネズミは人のにおいを嫌うため、餌を混ぜる際は手袋を着用しましょう。アルミトレイの上に毒餌をまく、新聞紙で毒餌を包む等の設置方法があります。

 捕獲罠にも種類があり、中でも粘着板は他の罠と比べ、準備や設置が楽です。一方、ネズミをおびき寄せる罠ではないため、ネズミの通り道に多く設置する必要があります。また、ほこりや虫が付着すると捕獲できないため、汚れに応じて定期的に交換しましょう。毒餌や捕獲罠は、②で確認した場所に設置します(写真1)。なお、毒餌は豚にも中毒症状を引き起こすため、豚が口にしない場所かどうか注意して設置してください。

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