飼料におけるアミノ酸バランスの重要性

2023.02

 IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)によると、世界の直近10年間の平均気温は、産業革命前と比べて1.09℃上昇したとされています。この気温上昇は人類の活動によって温室効果ガスが増加した結果であり、近年、国内で頻発している異常気象も気候変動に起因することが示されています。農業活動も気候変動と無関係ではなく、畜産生産における温室効果ガスの発生を効果的に抑制する技術が注目を集めています。

養鶏研究室

アミノ酸の役割

 採卵鶏及びブロイラーに必要な飼料中の栄養水準は、育種改良の進展にともない徐々に高まってきました。タンパク質を構成する個々のアミノ酸水準についても、一昔前と比べて大きく高まっています。一方、最近では、タンパク質やアミノ酸水準を高めるだけでなく、そのバランスを整えることの重要性が増しています。

 アミノ酸は消化吸収されると体内で再度タンパク質に合成されますが、11種類の「必須アミノ酸」のうち1種類でも不足すると、鶏肉や鶏卵の生産が不十分となります。これはよく『桶(おけ)の理論』とも呼ばれ、1つのアミノ酸を1枚の板に見立て、不足したアミノ酸があった場合には、板の高さが低いところから水がこぼれ、全体の水の量が減ってしまうことにたとえられます(図1)。桶の中の水がたまる量しかアミノ酸は有効に利用されないので、他のアミノ酸が無駄にならないよう、飼料に含まれる必須アミノ酸はバランス良く配合されることがとても重要になります。

バランス改善

 近年、アミノ酸のバランスを示す指標として、飼料中のリジン含量を100%とし、他のアミノ酸の量を比率で表す手法が一般的となっています。この手法を用いて飼料設計することで、飼料中のタンパク水準をそれほど高めることなく、不足するアミノ酸を個別に補うことでアミノ酸バランスを改善し、飼料栄養を効率的に鶏に摂取させることが可能となります。このような飼料を給与された鶏から排泄される窒素分は、通常の飼料を給与した場合よりも抑えられ、窒素に起因する温室効果ガスの発生も抑えられると考えられます。

生産性の効率化

 当研究室では採卵鶏のボリスブラウンに対して18~81週齢の間、一般的な飼料を給与した鶏群と、タンパク水準を低めてアミノ酸バランスを整えた飼料を給与した鶏群の給与期間中の産卵成績を比較しました(表1)。その結果、両試験区の産卵成績に違いは見られず、飼料中のタンパク水準を低めてもアミノ酸バランスを整えることで産卵成績が維持されることを確認しました(表2)。

 SDGsが叫ばれる昨今では、環境保全にも配慮した畜産生産のニーズが一層高まっており、当研究室では引き続き、現在の鶏に対してできるだけ過不足のない最適な飼料中のアミノ酸バランスを追求していきます。

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