第7回和牛甲子園 41校240人の“牛児”集結
鹿児島・鹿屋農高が初の栄冠

2024.04

応援に駆け付けたJA全農の和牛応援団長なかやまきんに君と一緒にパワーポーズをきめる高校牛児たち

 全国から和牛を飼育する高校“牛児”が集い、日頃の研究成果と枝肉の品質を競う第7回和牛甲子園が1月18・19日の両日、東京都内で開催された。コロナ禍以降、オンライン開催と実開催の併催が続いていたが、4年ぶりに完全実開催が実現。過去最多となる25道府県41校が出場し、会場は牛児たちの熱気に包まれた。

 品川グランドホール(東京都)で行われた開会式では、前回大会の総合評価部門最優秀賞を受賞した岐阜県立大垣養老高校の永瀬綾さんが優勝旗を返還。島根県立出雲農林高校の八幡十士郎(やわたじゅうしろう)さんら5人が出場校を代表し、「和牛のブランド力を世界に広めるため、切磋琢磨することを誓います」と宣誓した。

 JA全農の齊藤良樹常務理事は元日に発生した能登半島地震にふれ、被災地の一日も早い復興を願うとともに、牛児らに向けて「和牛甲子園を通じて『和牛飼育は楽しい! 一生の仕事にしたい‼』と思ってもらいたい。牛飼いの楽しさや奥深さを分かち合える仲間をつくってほしい」と呼びかけた。

総合優勝 鹿屋農業高校(鹿児島県)

総合評価86.8点 全国41校の頂点へ

 本大会は和牛の飼養管理の取り組みについて発表する「取組評価部門」(体験発表会)と、飼養した和牛の枝肉の品質を競う「枝肉評価部門」をそれぞれ50点満点で審査し、両部門の合計得点で「総合評価部門」の最優秀賞が決定する。

 高校牛児の頂点、総合評価部門の最優秀賞には枝肉評価部門で48点、取組評価部門で38.8点、総合評価86.8点を獲得した鹿児島県立鹿屋農業高校が輝いた。

 「抜群の枝肉」と高評価を受けた枝肉評価部門では、最優秀賞を受賞。取組評価部門では、地域未利用資源の竹の活用に加え、受精卵移植活用による高能力な牛群づくりの取り組みなどが評価され審査員特別賞に選ばれた。

 同校2年の山口蒼真さんは「枝肉評価部門で最優秀賞を受賞した『誠実号』は学校で生まれたET産子。肥育前期から飼養に関わってきたが、その頃から食い込みが良い牛だった。大きな病気もなく育てることができた」と話した。また、長嶺葉月さんは「私たちは皆2年生。来年も総合優勝を狙って頑張りたい」と意気込んだ。

鹿屋農業高校 肉用牛専攻班・鹿児島黒牛研究部の皆さん(左から山口蒼真さん、長嶺葉月さん、森元陽哉さん、浦崎聖斗さん、門原真央さん)
「宣誓!」
宣誓をした出雲農林高校の皆さん
牛っ!!
牛児らが書いた寄せ書き
撮影ブースで
グッ!
取組評価部門 審査委員長
東京農業大学
多田 耕太郎教授
枝肉評価部門 審査委員長
公益社団法人
日本食肉格付協会
小林 淳二専務理事
素晴らしい発表でした!
JA全農
齊藤 良樹常務理事

取組評価部門 加茂農林高校(岐阜県)

地域課題解決に向け挑戦

 取組評価部門の最優秀賞は、岐阜県立加茂農林高校が選ばれた。「I LOVE 飛騨牛 ~未来を切り拓く私たちの挑戦~」をテーマに、配合飼料を見直し、飼料用米を新たに配合することで飼料費の削減に取り組んだほか、牛体温監視システム「胃診電信」を導入し、ルーメン内の温度変化を観察した。繁殖牛が39度前後で安定しているのに対し、肥育牛は不安定なのに加え、40度以上になる日が20日間以上あることに着目。原因を濃厚飼料の多給と仮定し、濃厚飼料の配合率を85%から72%に削減することで健康的に肥育牛を飼養することに成功した。

 同校3年の橋本美桜(はしもとみお)さんは「農業高校に入るまでは消費者の立場でしかなかった。はじめて自分も生産者という立場になり、視点が変わった。少しでも地元の農家さんたちの力になりたくて研究した」と力強く語った。

 同部門の審査委員長で東京農業大学の多田耕太郎教授は「損失を考えると農家が生産方法を変えるのは難しい。高校生だからこそ、さまざまな取り組みにチャレンジして、安全な失敗もできる。ICT機器などを使って非常に細かくデータをとって調査しており、素晴らしい取り組みだった」と挑戦をたたえた。

 優秀賞には臭気対策や地域交流に力を入れた中央農業高校(神奈川県)、肥育技術の確立と瑕疵(かし)低減に取り組んだ市来農芸高校(鹿児島県)が受賞した。優良賞は、堆肥の新たな有効活用などを発表した大垣養老高校(岐阜県)、アニマルウェルフェアの実践と普及を目指した渥美農業高校(愛知県)、菌床を用いて敷料コスト削減に挑戦した高鍋農業高校(宮崎県)が選ばれた。また、参加した牛児らが選ぶ高校牛児特別賞は加茂農林高校、審査員特別賞は農芸高校(京都府)、鹿屋農業高校(鹿児島県)が輝いた。

取り組みを発表する加茂農林高校の生徒ら
加茂農林高校
左:橋本美桜(はしもとみお)さん
中:渡邉煌(わたなべきら)さん
右:秋田凪生(あきたなぎは)さん

レジェンド講話 農大の特色や仕事まで、進路をアドバイス

 特別企画として、第3・4回総合評価部門 最優秀賞受賞校 鹿児島県立市来農芸高校の卒業生3名が“先輩牛児”として登壇し、講話を行った。

 非農家出身で株式会社オクトファームで生産牛管理の業務に携わっている中養母陸斗さん(鹿児島県)、社会に向けて農業情報を発信したいとメディア関係の学部に進路変更した上田平夏美さん(神奈川県)、実家の株式会社ミヤボク宮下牧場で働く宮下未来さん(鹿児島県)の3人に農業大学校での生活や特色など、現役牛児たちから質問が寄せられた。

先輩牛児として登壇した中養母陸斗さん(左から2番目)、
上田平夏美さん(右から2番目)、宮下未来さん(右)

枝肉評価部門 鹿屋農高(鹿児島県)

他を圧倒する枝肉

鹿屋農業高校
総合優勝と枝肉評価部門の最優秀賞を受賞!

最優秀賞を受賞した枝肉断面

 2日目は、東京都中央卸売市場食肉市場で枝肉勉強会と枝肉共励会が開かれた。勉強会では、全農職員が枝肉断面にライトを当てながらポイントを解説。また、共励会では自分たちが育てた牛の枝肉がセリに掛けられると「よろしくお願いします!」など元気な声援を送り、大盛り上がりとなった。最高値は京都府立農芸高校の1kg6506円。生徒らの大声援に後押しされるように、つぎつぎと高値でセリ落とされた。

 枝肉評価部門の最優秀賞は、総合優勝を果たした鹿屋農業高校が受賞した。出品した「誠実号」(父=喜亀忠、母の父=安福久、母の祖父=勝忠平)は、枝肉重量635kg、ロース芯面積107.0㎠、BMSNo.12、一価不飽和脂肪酸(MUFA)含量の予測値は55.6%。審査講評では「東京食肉市場で同日開催されたどの共励会のチャンピオン牛よりも素晴らしかった。非常に良くできた枝肉だ」と惜しみない賛辞が贈られた。同校2年の森元陽哉さんは「牛は手をかけた分だけ応えてくれるところが魅力。将来は実家を継いで日本一の農家になりたい」と語り、会場を沸かせた。同部門の審査委員長で日本食肉格付協会の小林淳二専務理事は「プロポーションや肉質、オレイン酸値が50%以上など素晴らしい枝肉がそろった。入選が叶わなかった学校も来年に向けて奮起してほしい」と激励した。

セリの高評価に喜ぶ水戸農業高校の生徒ら
枝肉勉強会の様子

世界へ和牛の魅力発信 “着物ブッチャー”が講演

 2日目の特別授業の講師は世界で“お肉”の技術と“和牛”文化の伝道師として活動する、“着物ブッチャー”こと渡邊麻莉夏さん。「私の進路選択と食肉業界」をテーマに、食肉業界や世界に向けて和牛の魅力を普及する活動について話し、学生からは「海外で印象深かった出来事」などの質問が寄せられた。

 渡邊さんは「たとえ言葉が通じなくとも、気持ちがあれば相手に通じるものはある。皆さんも、将来はぜひ海外へ出て、和牛のおいしさを伝えてほしい」と牛児らにエールを贈った。

着物ブッチャーの渡邊麻莉夏さん(右)

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