きてみて!うちの学校/岐阜県立大垣養老高等学校

2025.07

西濃地域に立地する岐阜県立大垣養老高等学校は、2005年4月に大垣農業高等学校と養老女子商業高等学校が統合して開校した。同校は和牛甲子園の常連校で、22年度の第6回大会では総合評価部門最優秀賞を獲得。24年度の第8回大会では取組評価部門で優秀賞を受賞し、先進的な取り組みが評価された。岐阜県北部と比較して畜産業がそれほど盛んではない西濃地域において、どのような学習をしているのか。同校の取り組みを取材した。

第8回和牛甲子園(2024年度)取組評価部門 優秀賞受賞

校名
岐阜県立大垣養老高等学校
所在地
岐阜県養老郡養老町祖父江向野1418-4
生徒数
695名(男264名、女431名)(2025年4月末時点)
創立
平成17年(2005)年
学科
農業科(動物科学科、食品科学科、園芸科学科、環境科学科)、総合学科(ビジネス系列、会計系列、情報系列、生活福祉系列)

辻野 清太郎(つじの きよたろう)先生

 生徒には社会人になってからも活躍してもらいたいです。そのためには自主性を育むことが大事です。失敗すると分かっていても我慢して見守っています。間違いや失敗は高校生のうちなら許されるので、試行錯誤して大いに悩んで学びを深めてもらいたいと思っています。

 大垣養老高等学校には農業科と、商業科・家庭科の総合学科がある。1年生は学科群ごとに共通カリキュラムで学び、2年生からは興味や関心、進路希望に合わせて学科に分かれて専門分野を学習する。

 同校には畜産農家の生徒はほとんどいない。同校が立地する西濃地域は主に水稲を生産しており、畜産が盛んな岐阜県北部とは違い、1学年に1人いるかいないかだという。

 生徒を指導する辻野清太郎先生は言う。「生徒たちのほとんどは畜産になじみがないので、1年生のときはとにかく畜産に興味を持ってもらえるように働きかけます。そして、2年生から専門分野の学習に取り組むことで、畜産の奥深さに触れてもらうようにしています」

県内の高校と連携しレベルを底上げ

子牛「お姉ちゃんやお兄ちゃんたちは、子牛班、肥育班、飼料班、堆肥班に分かれて仕事をしているよ〜
僕のことは子牛班が世話をしてくれるんだ♪」

 和牛甲子園は生徒の知識欲を刺激するのに有効だと辻野先生は言う。「他校の生徒と競い合い、発表することで自分たちの学習の現在地が分かりますし、賞という目標があることでモチベーションが上がります」

 岐阜県で牛を飼養する高校は4校あるが、すべての牛を集めても100頭程度だという。これは畜産の盛んな鹿児島県の高校一つ分の規模。辻野先生は4校で連携することが、岐阜県の高校のレベルを底上げするのに重要だと考えている。乳牛を飼養する岐阜農林高等学校で研修したり、飛騨高山高等学校の繁殖牛を用いて家畜審査協議会の学習会を実施したりするなど、ライバルでもありチームでもある関係を築いている。

和牛甲子園全国屈指の強豪校

第8回和牛甲子園取組評価部門 優秀賞 受賞おめでとう

取組発表「岐阜県の輪~消費者が求める牛肉を目指して」

 同校は和牛甲子園には第2回から参加している。昨年度の第8回では取組評価部門で優秀賞を受賞するなど、全国屈指の強豪校だ。

 そのときの発表では、大型送風機による暑熱ストレス対策を紹介している。今年度は牛体調モニタリングシステムのCAPSULE SENSE(カプセルセンス)を導入。温度と加速度のセンサーを内蔵したカプセルを直接胃の中に滞留させ、牛の活動量を常時モニタリング。発情や疾病の早期発見だけでなく、飲水の量などもセンシングすることができる。

 「近年の夏の高温は対策が急務です。センサーで得られた情報や地元企業にいただいた大型送風機などを駆使して、食い止まりがでないようにしたいです」と男子生徒は言う。

 暑熱ストレス対策は研究テーマの一つで、今年度も継続して検証を進めている。

卒業生や畜産農家による手厚いサポート

他校の卒業生が指導してくれる

 岐阜県の高校では種雄牛の系統造成にも取り組んでいる。

 高校生は3年で入れ替わる。教員もいつ転勤になるかわからない。系統造成で牛をつないでいくことで、他校の卒業生が同校の在校生に指導する機会を作ることができる。

 例えば、飛騨高山高等学校で育てた子牛や孫牛が同校にいることで、学校の垣根を越えて先輩たちが指導をしてくれる。

 インターンシップでの学びも重要だ。一貫経営の農場で学んだ女子生徒は「教えていただいたことを学校での肥育に落とし込みたい」と話す。「汚れている飼料は食べないので丁寧により分けます。また、散らばっていると食いが悪いので、寄せてまとめると良いことなどを学びました」と言うように、プロの経験や技術が生徒に惜しみなく伝授されている。

 和牛甲子園の歴代の受賞校を眺めると、岐阜県勢の強さが目立つ。その強さの源泉は、学びを底上げする地域の連携だ。先生や卒業生、畜産農家、研究機関や大学など、多くのサポートがあるからこそ、生徒たちも楽しく深く学ぶことができている。

藤原 結(ふじわら ゆい)さん(右)
動物科学科は、困ったことがあればなんでも話し合えるのがいいところ。作業もチーム全員でやります。在学中に家畜人工授精師の資格を取得して、関係機関に就職したいです!

尾河 仁太(おがわ じんた)さん(左)
入学して本当に良かったです。牛をブラッシングすると気持ちよさそうな表情をするのでとてもかわいいです。普通科では味わうことができない貴重な体験をしています!

和牛甲子園 岐阜県高校の受賞歴

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