海外レポート番外編~米国の牧草生産および全農ヘイの原料集荷体制について~
2025.10
動画公開は10月20日(月)を予定しています。
米国西海岸北部ワシントン州パスコにある全農ヘイ株式会社(以下、ZHI)では輸出向け粗飼料の集荷・加工製造を行っています。今回は、粗飼料の輸出入を担当している城谷悦啓駐在員が、米国生産者の牧草生産およびZHIが行っている原料集荷について、圃場から工場集荷に至る作業工程をレポートします。
1.圃場での牧草生産
米国の圃場は主に山間部の自然降雨がある天水圃場と乾燥した平地に灌漑(かんがい)※設備を導入した圃場の2種類があります。チモシーは灌漑・天水を問わず作付けされますが、アルファルファは生育に水を多く必要とするため、主に灌漑圃場に作付けされることが多いです。今までは灌漑農業を行っていた地域の水源は十分に確保されていましたが、近年の天候変動により干ばつが進行し、灌漑用水の確保が難しくなる地域もあります。
※灌漑(かんがい):河川や地下水、湖などから水を汲み上げ、農業用水を田畑に人工的に供給すること。

米国の冠水灌漑圃場

散水設備

灌漑圃場で育ったアルファルファ
2. 刈り取り・乾燥
収穫適期まで牧草が成長すると大型農機で刈り取りし、適当な水分量となるまで、7~10日間かけて牧草を天日乾燥させます。牧草の乾燥が均一になるように、定期的に牧草をレーキング(反転・集草)する圃場もあります。
乾燥時に降雨があると雨当たり品となり価格が落ちるため、通常は雨予報がある時期は刈り取りを避けます。しかし、収穫時期が遅れると、過熟による牧草の品質低下、スケジュール遅れによるその後の収穫量の減少リスクとなるため、状況に応じて刈り取りを始めざるを得ないこともあり、生産者は日々自然界と戦っています。



3. 牧草の梱包・圃場保管
圃場での乾燥が完了すると牧草の畝にベーリング機を走らせ、牧草を梱包(ベーリング)します。近年はベーリング機の大型化が進み、4ft×4ft×8ft(122cm×122cm× 244cm)または3ft×4ft×8ft(91cm×122cm× 244cm )の大型の梱包(ビッグベール)での集荷が多くなりましたが、米国内の小売り・馬糧用の牧草は、昔ながらの3タイ・2タイと呼ばれる小型の梱包(スモールベール)が多く流通しており、仕向け先によって収穫方法が決まります。


梱包された牧草ベールは、ベールスタッカーで回収され、圃場の保管場所に積み上げられます。その後、保管中に日差しによる脱色や雨当たりを避けるため、タープと呼ばれる分厚いビニールでラッピングされます。


4.検品/価格交渉
ZHIのような輸出向け牧草加工事業者(サプライヤー)の集荷担当(バイヤー)は、牧草生産者の作付け状況や収穫物の品質などを調査・検品するため、生産現場へ日々赴きます。その際に牧草の品質を確認するために成分分析およびサンプル品の採取なども行っています。牧草生産者との間では、交渉が日々行われ、互いが納得する内容まで進めば、売買契約に至ります。契約条件は牧草の換金条件やその他の貨物とのセット販売交渉など、多岐にわたります。

5.品質チェック・工場搬入
契約が完了した牧草ベールはトラックでZHIの工場まで持ち込まれます。工場への搬入時には牧草の重量・水分・異物やカビ等がないかなどの品質検査を行い、検査をクリアした牧草のみが工場倉庫に移動されます。


6.工場でのキューブ・圧縮加工・出荷



集荷された牧草原料ベールは、担当者によって品質別にグレード選別(グレーディング)されます。ZHIの加工工場では、日本側からの注文に合わせて、保管されている原料を輸出用にキューブ加工または牧草として圧縮加工(ダブルコンプレス)し、製品に加工していきます。輸出用のコンテナに積み込まれ、約30日の海上輸送を経て、日本へ輸出されます。

7.まとめ
米国の乾牧草事業は、大型加工事業者(サプライヤー)によって物流上合理的な圧縮加工が行われ、日本を含むアジア諸国へ輸出されます。牧草生産現場では、農業機器の大型化が進み、より効率的な営農となるよう日々進化を続けています。今回紹介したように、ZHIはこれからも良質な乾牧草を集荷・加工し、日本の畜産業に必要不可欠な粗飼料製品を皆さまにお届けします。
全農ヘイ株式会社(ZEN-NOH HAY.inc)
1994年にヘイキューブの製造拠点として設立。日本の需要構造の変化に応じ、事業形態を変化させながら、現在はキューブ類、乾牧草の加工製造事業を行っています。2025年6月に全農グレイン㈱の粗飼料Agency事業をZHIへ統合し、粗飼料総合会社として事業領域を拡大しています。