日米間の食肉ビジネス関係強化
米国の食肉事業者を日本へ招待
2025.07
米国は日本産牛肉における最大の輸出先国です。近年では米国の低関税枠6万5005t(日本を含む複数国枠)が、毎年、早々に上限に達し、高関税が課される厳しい状況にもかかわらず、輸出数量を維持・拡大させてきました。
全農アメリカ(株)(※1)は2025年3月2日から6日までの5日間、主要取引先である食肉卸会社Meats By Linzを日本に招き、JA全農くみあい飼料(株)、(株)いわちく、JA全農ミートフーズ(株)、JA全農インターナショナル(株)の協力のもと、国産和牛の生産から消費・販売に至る一連の流れを視察してもらう機会を設けました。
本企画は全農グループの国産和牛生産への取り組みや品質管理への理解を深めてもらうとともに、日米間の食肉ビジネスにおける関係強化を図ることを目的としています。
※1 25年5月より海外事業再編に伴い、全農アメリカホールディングス(株)に変更
米国向け牛肉輸出量
24年に日本から米国向けに輸出された牛肉は2139t(前年比187%)です。背景には、中華系の火鍋レストランなどへの和牛の販売が堅調だったことがあります(図1)。
19年の米国向けの牛肉輸出量は398tでしたが、コロナ禍以降、ECサイトや火鍋レストランなどでの和牛の取り扱いをきっかけに、爆発的に輸出数量を伸ばしています。



日本産牛肉を取り巻く関税の状況
20年1月に発効された日米貿易協定に基づき、日本産牛肉を米国へ輸出する際には、低関税枠内(6万5005t)であれば1kgあたり6.6円(1ドル=150円換算)、低関税枠を超過した分については商品価格に対して26.4%(従価税)の関税が課されることとなっています。
日本は低関税枠をブラジルやヨーロッパの数カ国などとシェアしており、25年は1月17日時点で上限に達しています(図2)。5月時点では相互関税10%も上乗せされ、合計で36.4%(従価税)の関税が課されている状況です。

バイヤー招待の意義
前述のように米国向け輸出は厳しい状況ですが、輸出拡大に向け、現地で輸入・販売に携わる方々に、国産和牛の生産現場を視察してもらうことで、国産和牛の価値を肌で感じ取ってもらうことが重要だと考えています。
生産者と直接会うことで、言語や文化の壁を越え、お互いの理解を深める関係作りを目指しています。
生産現場への訪問
今回、食肉卸会社Meats By Linzの代表者John氏を岩手県に案内し、東北和牛の繁殖農場である藤沢牧場、肥育農場の黒澤農場に訪問しました。当日は全農グループの生産から販売までの一連の流れを説明し、生まれてから出荷されるまでの成長段階を視察してもらいました。
また、(株)いわちくにも訪問し、屠畜から加工までの一連の流れを見学してもらい、代表のJohn氏からは「品質管理水準の高さに感銘を受けた」との感想がありました。
見学の最後には、(株)いわちくで製造されているモモを使ったローストビーフを試食してもらい、ロイン系部位以外の食べ方について、アイデアを提案しました。


「国産和牛の生産への徹底したこだわりと品質管理に感銘を受けた」と
Meats By Linz社のJohn氏
販売現場訪問
(株)いわちくが経営している焼肉店「銀河離宮」(※2)に案内し、リブロースやサーロインなどのロイン系部位だけでなく、バラやモモ、カタなどさまざまな部位を試してもらうことで、部位ごとの魅力があることを伝えました。
加えて、東京や岩手の量販店を視察し、日本の家庭でも和牛が消費されていること、ロイン系以外の部位を利用していることを知ってもらいました。視察最終日には、東京市場にも足を運び、セリ場では牛肉の取引現場を体験してもらいました。
※2 25年4月より事業移管し、JA全農直営店舗に変更
最後に
全農アメリカ(株)は、米国のニューヨークやロサンゼルスなどの2大都市だけではなく、シカゴなどさまざまな都市へ向けた輸出へ挑戦しています。
今後も日本産農畜産物のおいしさと感動をお届けするとともに、輸出販路の拡大を通じて、生産者の所得向上に取り組んでいきます。
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