ET研便り 系統結集 生産性向上全力サポート
2024年度にJA全農ET研究所が実施した受精卵移植の受胎率
2026.01
JA全農ET研究所の職員による2024年度の受胎率実績がまとまり、良好な結果が出ましたのでご報告させていただきます。本研究所は、主に和牛受精卵の生産および移植を行っており、北海道を拠点に岩手県、茨城県、福岡県に分場を持ち、全国で移植技術の普及・拡大を進めています。今後はより一層本研究所の職員による移植頭数・対応エリアを拡大し、生産者の課題解決のサポートをしてまいります。「生産性向上全力サポート」でも本研究所の受精卵を提案させていただいておりますので、ご活用ご検討ください。
ET研究所
1 2024年度受胎率実績の解説
❶移植全頭数の受胎率
JA全農ET研究所の職員による移植数は2024年度実績で7,328件になり、受胎率総計は54.8%となりました。参考として、人工授精師協会が取りまとめた23年度の体内受精卵移植による受胎率は48.4%と報告されており、本研究所の移植実績は6%以上良い成績でした。
❷未経産牛と経産牛の比較
品種を問わず受胎率を経産牛・未経産牛ごとにまとめたところ、未経産牛の受胎率は経産牛と比較すると10%以上高くなりました。どの品種の受胎率も、未経産牛>経産牛という結果になりました。
❸体外受精卵(IVF卵)
本研究所の職員が移植した受精卵はほとんどが体内受精卵ですが、体外受精卵(IVF卵)のみの受胎率を抜粋すると53.8%となり、こちらも人工授精師協会のとりまとめた体外受精卵受胎率38.9%を大きく上回っています。
2023年度成績は下記ウェブサイトへ
「2023年度版 全農ET研究所の受精卵の移植成績を徹底解剖」(『ちくさんクラブ21』2024年10月号vol.151)

2 暑熱期間での受胎率

近年、夏場における暑熱ストレスが強く、かつ長期間にわたり継続し、このことによりウシの繁殖に与える影響が大きくなっています。ウシの体温が40℃を超えると、人工授精による受胎率が大きく低下すると言われ、精子が死滅してしまうこと、また受精したばかりの卵子が成長できないことが原因となっています。
受精卵は、ウシの体内で人工授精により受精し、その後7日程度で採卵され、凍結保存されます。このように成長した受精卵は、すでに温度の影響を受けやすい期間を過ぎています。結果として受精卵移植は、夏場の移植でも高い受胎率が期待でき、人工授精に比較し受胎率改善に効果があります。
以下に、本研究所による月ごとの受胎率を示します(表2)。8〜9月に多少の低下は認められますが、年間を通して50%以上の受胎率が確保されています。夏場でも受精卵移植による受胎率が維持できるよう様々な対策を講じており、本研究所の技術を活用することで、受胎率改善が可能となります。「生産性向上全力サポート」の中でも、暑熱対策メニューとして、本研究所の受精卵のご利用をご提案しております。
また、凍結卵と比較すると新鮮卵の移植は受胎率が高いことが報告されていますが、本研究所の実績でも5ポイントほど高い結果となっています(凍結卵52.2%、新鮮卵57.2%)。暑熱対策としてより効果を求めるのであれば、新鮮卵移植を行うシンクロETの実施を推奨します。
3 JA全農ET研究所の受胎率が高い要因
本研究所による受精卵移植の受胎率が優れる理由は、以下の事項を徹底して行っているからです。
- 移植する受精卵は、採卵から凍結までの作業について、細心の注意を払って実施している
- 採卵した受精卵の選定は、技能を持った職員のみが行い、少しでも受胎性に影響がある可能性があれば製品化しない
- 受精卵の移植は、本研究所で一定の技能を習得した職員のみが行う
- 移植に際しては、発情同期化を行ったうえでレシピエントの状態を確認し、受精卵移植に適さないものは実施しない
このように受精卵、牛、人のすべてが高度な条件で受精卵移植を行うからこそ、実現できる結果なのです。
4 まとめ
例えば、搾乳牛100頭の場合、受胎率が60%から50%に低下すると、全頭が受胎するまでに要する受胎行為は31回も増加します(60%;167回、50%;198回)。人工授精に比較し費用が高い受精卵移植では1回の受胎費用は大きく経営に影響します。ET研究所はその重要性を理解しているからこそ、高い技術を維持するよう日々対応しています。
近年、夏場における受胎率低下が課題となっており、その解決策として受精卵移植が有効とされています。しかし、高度な技術がなければその効果を引き出すことは不可能です。
その他にも、受胎率改善対応策として濃厚和牛精液なども準備しています。本研究所は様々な方法で受胎率改善に向けこれからも実直に取り組んでまいります。
受精卵の血統や価格についての詳細は、こちらに問い合わせください。
連絡先
TEL:01564-9-5122
mail:zz_zk_etc_kamishihoro@zennoh.or.jp
ET研究所は、受精卵の製造・移植だけでなく生産基盤拡大のために様々な事業を行っています。
主な事業案内
●妊娠した乳牛の販売・乳牛預託事業
●農家後継者への受精卵移植技術研修(繁殖義塾研修制度)
●和牛・乳牛精液の供給
これらの取り組みにつきましても、今後生産者の皆様に紹介していきたいと思います。
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