福島県塙町 株式会社ベルファーム
持続可能な畜産を目指し、明日も食べたくなる牛肉をつくる/福島県塙町 株式会社ベルファーム
2026.01

株式会社ベルファーム(Bellfarm)
代表取締役:鈴木立樹
本社:福島県東白川郡塙町大字片貝字殿畑60番地
従業員数:18人(パートタイム2人を含む)
飼養頭数:約1,620頭(肥育牛1,500頭、繁殖雌牛120頭)
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エコフィードで飼料コストダウン!
和牛の肥育と繁殖を手がける(株)ベルファームは、トウモロコシなどの輸入穀物飼料を減らす代わりにさまざまなエコフィード(食品残さから製造する飼料)を積極的に取り入れ、持続可能な開発目標(SDGs)を先取りした牛づくりを実践してきた。エコフィードの使用割合を7割まで高め、飼料コストを抑えた長期肥育を実現。環境に配慮しながら市場やエンドユーザーが求めている品質の牛を安定的に出荷し続けているのだ。

(株)ベルファームは福島県南の塙町を中心に、西郷村やいわき市、茨城県の水戸市や土浦市、群馬県太田市に牧場を構え、合わせて約1620頭の和牛を飼養している。常時700頭ほどを飼養する塙町の本場が最も規模が大きく、分場を含めた従業員数は18人(パート2人を含む)。本場や分場で働く従業員の多くが非農家出身で、代表取締役の鈴木立樹さん(51)は「人材育成も大事な役目です」と語る。従業員はまず本場で飼養管理や餌作りのオペレーションを学ぶ。経験を積んだ従業員に分場の管理を任せている。
ベルファームでは牧草を5ha栽培している他、県内の生産組合にデントコーンの栽培を委託し、年間1000ロール(1ロール350~400kg)を確保する。県内の牧場で発生する堆肥は、圃場に還元し、県外の分場では地域で循環させている。
各地に点在する(株)ベルファームの分場は、離農牛舎を借りるなどして徐々に増やしていったものだ。空き牛舎の有効活用は初期投資を抑えながら堅実に増頭できる手段でもあり、各地域の特性に合わせた繁殖や肥育ができるメリットもある。
繁殖用雌牛は西郷村といわき市、水戸市の分場で飼養しており、分娩もこの3カ所で実施。子牛は生まれた分場で半年間育てた後、塙町の本場で育成する。ただし自家産は全体の1割ほどだ。子牛は主に沖縄県内の家畜市場から毎月50〜60頭を買い付けている。「市場価格が本州よりも安く、余分な脂肪がついていない素朴な子牛が多い」(立樹さん)ことを理由に、沖縄の子牛にこだわる。立樹さんは「沖縄の子牛は草を豊富に食べているために胃袋が丈夫。痩せてて貧相な牛に見えてもまっさらな状態な方がベルファーム流の肉付けがしやすいです」と話す。
規模拡大後に、東日本大震災が直撃
立樹さんは法律を学ぶために東京の大学へ進学し、卒業後すぐに塙町へ帰郷。ほどなくして実家の肥育牧場を手伝うようになった。就農当時の飼養頭数は約150頭で、地元JAの組合長だった父・昭雄さん(78)の代わりに母・ハツエさん(76)とパート従業員たちと牛の世話をしていたという。畜産や牛についての知識が全くない中での就農。4人きょうだいの長男でもある立樹さんは「当時は積極的に跡を継ぐ気持ちはなかったが、1年経った頃に腹をくくり、自分の仕事だと思って取り組みました」と振り返る。分からないことがあれば近隣の肥育農家に教えを乞い、現場経験を積んでいった。
2009年6月に現在の法人を設立。立樹さんが代表取締役となり、少しずつ規模拡大を進めていった矢先、東日本大震災が発生した。大津波をきっかけとする東京電力福島第一原発の事故は、牧場の経営を直撃。塙町自体は放射性物質による深刻な影響を受けなかったが、事故から4カ月後の11年7月には福島県内で飼養されている肉用牛が出荷停止になり、移動も禁止された。検査体制などが整った約1カ月後には出荷や移動が再開されたが、原発事故による風評被害によって福島県産牛の市場価格は他県産よりも安くなり、厳しい状況だったという。
「ベルファーム」ブランドで人を惹きつける肉作り
こだわり❶子牛――主に沖縄から買い付け
立樹さん自らが沖縄まで足を運ぶ。
まっさらな状態の方がベルファーム流の肉付けがしやすいことから、痩せていて貧相に見える牛をあえて選ぶ。
代表取締役
鈴木 立樹(すずき りゅうじ)さん



風評被害に苦しむ中、神戸市場に活路を開く
東京市場での販売が低迷する中、立樹さんは雌牛肉の評価が高い神戸市場へ活路を求め、出荷することを決断。神戸市場の関係者からは「福島県産のレッテルがあると大変だと思う」「正当に評価されるまで時間がかかるよ」などといった声もあった。しかし、毎月2頭ほどの出荷を続けていると、(株)ベルファームの肉を購入した関西の飲食店から「おいしい」との声が出始め、卸売業者から「もっと欲しい」とリクエストされるまでになった。立樹さんは「〝うまけりゃいいじゃないか〟、〝福島がどうのと、いつまでも言っているのはおかしい〟との声に支えられました」と当時を振り返る。

東京市場や地元以外への出荷は初めての挑戦だったが、牛肉の品質が正当に評価されるにつれ、神戸市場への出荷頭数は右肩上がりで増加。現在は出荷頭数の約5割に落ち着いているが、一時は全体の8割まで神戸市場が占めるほどだったという。
神戸市場の特徴としては、色が濃くて肉味が濃いものが好まれると、立樹さんは語る。反対に東京市場は薄いピンク色の肉質が好まれ、「東京では色濃いねって言われるとネガティブな意味が多いですが、関西ではポジティブな表現なんです」と、肉の評価が違う点に注目する。さらに、食に対する考え方にも違いがあり、関西の飲食店や卸売業者はおいしい食材を企業秘密にしたり独占したりせず、マーケットがオープンだという。そのため、「飲食店が大々的にベルファームの肉を店内やSNSで宣伝してくれ、問い合わせが増えていきました」と立樹さんは頬を緩ませる。
飼料コストを抑え、食味を優先する牛づくり
(株)ベルファームは、法人設立前からエコフィードを活用しており、現在は粗飼料を除いた飼料のうち約7割までエコフィードが占めている。飼料は長年の経験に基づいて設計しており、現在は育成用と肥育用の2種類をそれぞれ独自に配合。どちらもビール粕をベースにしており、近隣の業者から提供される酒粕や果汁の搾り粕、カット野菜や餅くず、そば粉やそうめんなど、季節に応じた食品残さを10種類以上使用している。


栄養成分などの確認が必要な際はJA全農くみあい飼料(株)に分析を依頼。(株)ベルファームを担当する南東北支店福島営業所の奥田智さん(37)は「鈴木代表からは学ぶことが多い。餌に限らず役に立つ情報を積極的に共有し、支えていきたいです」と話す。
エコフィードの活用については、「産業の都合で活用できない食品も牛になら飼料として活用できる」という就農当時から立樹さんが抱いてた実直な思いから始まっている。実践していくにつれて提供元が増えていき、エコフィードが安定的に確保できるようになった。その結果、穀物価格の高騰に左右され難い経営が確立された。立樹さんは「将来の肉質や体型が決まる10〜16カ月期間の飼料メニューが確立できたことで自信がつき、不安がなくなりました」と打ち明ける。
雌牛にこだわっている(株)ベルファームでは、最低でも30カ月齢まで肥育してから出荷する。最も多いのが32カ月齢で、長期肥育することで肉のうま味が濃く、肉質も安定した牛になるのが理由だ。
(株)ベルファームが目指す牛肉は、きめが細かい肉質で、毎日でも食べたくなる飽きのこない味が理想だという。ベルファームというブランドで人を惹きつける牛をつくることを目標に、立樹さんの挑戦はこれからも続く。
こだわり❷餌――エコフィードの使用率7割

こだわり❸肥育――長期肥育で肉質安定
32カ月齢の出荷が最も多い。
毎日食べたくなる肉質の牛を育てる。


出荷間近の肥育牛
こだわり❹出荷――5割が神戸市場へ
飲食店などがベルファームの肉をSNSで宣伝!



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