「2022年のトピックス」
豚舎の環境にかかわる実例紹介
2022.12
豚舎の環境を豚の発育ステージに合わせ、適切に調節するには調査にも時間がかかります。更に、毎日作業をしている豚舎では、その環境に慣れてしまい、問題点に気づかなくなってしまう場合もあります。今回は、当室において経験した、タイパ(時間面)やコスパ(費用面)の点で、簡単で効率的に取り組むことのできる豚舎環境の改善にかかわる実例を2つご紹介します。
養豚研究室
照明設備と年間受胎率
照明の整備や増設によって年間受胎率が改善した農場の事例です(図1)。特に重要となるのが、育成豚と離乳母豚の適切な照度管理です。豚の顔の位置で300ルクス、14~16時間の点灯が必要だといわれています。300ルクスは、一般的に「読書ができる程度の明るさ」といわれていますが、感じ方には個人差があるので、照度計を用いたストールごとの照度確認が推奨されます。 照度が不足していた場合は、照明の清掃が効果的です。それでも照度が不足する場合は、市販されている照明器具を購入してください。その際、LED照明の増設がおすすめです。開放豚舎では外から光が入ってくるため、照度が足りているイメージがありますが、カテーテルで種付けする時などに手元が暗いと感じる日もあり、LED照明の整備によって改善された例もありました。
環境調査を何から手を付けるか
毎日行える簡単な環境調査として、「気温(舎内温度)」と「風の流れ」の調査が挙げられます。
最低及び、最高温度は豚の発育に大きく影響します。また、強すぎる風は特に若齢子豚に対してストレスとなり、発育成績を悪化させる可能性があります。まず、風の流れを目で見えるようにして、ご家族や従業員と一緒に確認します。これには、ガステック社製の発煙管が広く使用されています(写真1)。
ある豚舎での、風の流れ調査の結果を示しました(図2)。この事例では、複数人で豚舎に入り、発煙管から煙を発生させました。煙の動きを見ることで、風の流れが分かります。その流れをノートなどに矢印で写し取り、記録します。農場のスタッフと一緒に煙の動きを見ることで、次の改善に向けたステップに進みやすくなります。
例えば、「この豚房は発育が悪い、豚への風の当たりが強い場所があるのかも(図2・赤枠)」「この場所だけ風の動きが違うので、隙間風の可能性がある。補修しよう」「この豚房は空気が動かないので換気が悪い」など、解決のための糸口を効率的に見つけることができます。詳細を知りたい方は、過去「ちくさんクラブ21」に掲載された当室の記事をご覧ください。
見ていただきたいちくさんクラブ記事
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