「生産性向上のための技術紹介」
すぐに実践したい!繁殖用母豚と雄豚の生産性向上技術

2023.07

 農場経営において、種豚の素質や性能を最大限に発揮させる飼養管理を行い、1母豚あたりの肥育豚の出荷数の増加や無駄な飼料費の低減に努めることが重要です。養豚生産の繁殖サイクルは、夏場に崩れることが多いため、この季節に有効な繁殖用母豚及び雄豚の生産性向上技術をご紹介します。

養豚研究室

週「1回分」分娩回数増加

 目標として、週に「1回分」の分娩回数を増やすことを設定します。このケースでは、母豚200頭規模の農場で毎週の分娩回数が約7.7回(年換算400回)ある農場が、約8.9回(年換算460回)と増加した場合に目標が達成されます(図1)。1母豚あたりの年間分娩回数に換算すると、2.00回だった農場の成績が、2.30回となる計算です(全農Web PICSの2022年成績調査の平均的な分娩回数)。

母豚の管理ポイント

 母豚にとって最適な環境を数字で押さえましょう。環境は、温度15-22℃、相対湿度60-70%が最適とされています。しかし、実際の豚の体感温度には、風の当たり方(風速)、床の状態(床材)、飼養密度などが影響します。養豚農場において、母豚が暑熱ストレスを感じているかを日々の観察で判断する指標としては、呼吸数が挙げられます。最適な環境では、母豚は1分間に30回程度呼吸をしますが、暑熱環境では呼吸数が60回程度まで増加します。

母豚の具体的な対策

 暑熱ストレスを感じている母豚の体温を下げる方法は、次の3点です。

①ドリップクーリング(写真1)や細霧と換気を組み合わせ、体表からの気化熱を増加させる
②気温の高い日中の飼料給与を避ける
③冷水・氷の給与やホースを用いた水浣腸を行う

 これらの方法を組み合わせて、少しでもストレスのかからない環境をつくることが繁殖成績を上げるカギです。更には、暑熱環境では飲水量も増加し、体内の電解質のバランスが崩れやすくなるため、ニューケアフルメイト(科学飼料研究所製品)などの補給用サプリメントで栄養を補うことも有効です。

図2 科学飼料研究所が推奨する
水溶性混合飼料ニューケアフルメイト

暑熱下における種雄豚の管理ポイント

写真1 ドリップクーリング

写真2 豚舎における暑熱対策
豚舎カーテンの外側に設置した寒冷紗

写真3 サーモグラフィーによる
豚の皮膚温度分布(室温30℃,湿度86%)
①ドリップクーリング未実施(上)
②ドリップクーリング実施(下)

 精子は5~6週間をかけて作られるため、暑熱の影響は初秋に現れます。一番の対策は、環境対策であり、舎内への日射熱の進入を防止するのが有効です。断熱強化として、屋根の白色化や寒冷紗設置(写真2)、ドリップクーリングの設置が挙げられます。

 雄豚に対する暑熱対策は、睾丸の温度を下げるのが一番簡単です。赤は高温、青は低温を示すサーモグラフィーを用いて睾丸付近の温度を測定したところ、ドリップクーリングにより睾丸の温度が低下しました(写真3)。対策を施しても精子数や活力が低下する場合は、AI用精液を用いることを検討します。しかし、AI精液も輸送中のトラブルにより活力が失われている可能性があるため、精液性状の検査が必要です。

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