効率的な後継牛の育成と牛群管理 ~酪農の現在とこれからの未来のために~
「全農酪農セミナー2022」を開催

2023.04

 第16回目を迎えた全農酪農セミナーが2023年1月6日~31日にかけて、オンライン形式で開催されました。今年度はバージニア工科大学名誉教授ロバート・ジェイムス氏を講師に迎え、「効率的な後継牛の育成と牛群管理」について講演いただきました。

 酪農業界における世界的な課題として、生産効率、労働力の確保及びそのコスト、環境問題、消費者意識、乳製品代替品の台頭などが挙げられます。本講義ではその中でも、“効率性”について、後継牛の管理を中心に、このテーマを更に3つのセクションに分けて解説しました。

講師 ロバート・ジェイムス氏

酪農コンサルタント

Down Home Heifer Solutions, LLC

バージニア工科大学  酪農学部  名誉教授

バージニア州ブラックスバーグ

Section1 子牛、後継牛管理計画の決定/新生子牛の管理

計画的に後継牛を確保しよう!

 最初に、農場にとって最適な後継牛の頭数は何頭なのかを考えなくてはいけません。その際、乳房炎や繁殖管理に関連する「消極的な」淘汰や、農場での各種疾病発生を最小限に抑え、後継牛の死亡率や疾病罹患率をできるかぎり抑える必要があります。その上で、後継牛の必要頭数に加え、ある程度の余剰頭数も確保し、牛群の規模を維持するのか、拡大するのかなど、経営方針に沿って最終的な頭数を決めていきます。

分娩月齢を引き下げよう!

 もう1つの効率化として、分娩月齢を引き下げることを提案しています。従来の管理方法と、給餌量や飼育コストの高い「集中的な管理」を比較したところ、集中的な管理のほうが、増体量が大きくなりました。総飼育コストを見ると、1日あたりの平均コストは前者が3.12ドル、後者が3.48ドルで同程度の飼育コストとなったものの、「集中的な管理」のほうが、初産時の乳量は高くなりました。その結果、最終的な収益性は高くなっています。

Section2 哺乳期における子牛の管理

56日齢で出生時体重の倍を目指す!

 乳牛の栄養管理で重要なことは、増体に関する遺伝的能力を発揮させること、増体1kgあたりのコストパフォーマンスを上げることです。

 哺育における第一目標は、良い増体を維持し、健康な子牛に育てることです。そのためには生後2週齢までの成長が重要であり、その間全乳や代用乳をしっかりと摂取することが必要です。

 具体的にどのくらい成長すればいいのでしょうか?DCHA(米国の子牛育生協議会)「ゴールドスタンダード」は56日齢で出生時体重の2倍を目標にしています。子牛の出生時体重を測定し、それぞれの個体サイズに応じて増体目標を設定しましょう。

 哺乳期により良い子牛を育てるには、まずは十分な全乳か代用乳を与える必要があります。子牛の給餌管理では一貫性が重要であり、餌の品質を一定に保ち、毎日同じ時間に給餌することが重要です。

離乳について

 離乳は液状飼料から固形飼料への移行という栄養面の課題、その次に群飼育への移行という社会的な行動に関する課題があります。

 通常、ミルクの給与量を制限することで離乳を促します。制限の方法は徐々に減らしていくか、突然行うなどが挙げられます。離乳1週間前に1日1回哺乳にするという方法をジェイムス氏はよく見かけていたようです。その中でも、ステップダウン法で段階的に離乳させていくことを勧めています。毎日1Lずつ減らし、1日2Lになるまで2~3段階、10~14日かけて減乳していきます。

 子牛にとって全てが望ましい状況になるとは限りませんが、その中で妥協点を見つけながら行うことが重要です。離乳を成功させるには何かしら妥協しなければいけないことが出てくることを忘れないでください。

Section3 離乳後の未経産牛管理

 離乳後の管理で最も重要なことの1つは、費用対効果の高い増体成績を継続させることです(※1日あたりのコストではなく、増体1kgあたりのコスト)。

 そのために注目するポイントは、離乳後の未経産牛の管理、種付け前までの管理、栄養効率と飼養施設による制限要因です。

未経産牛をどのように管理しているか? ~積極的vs場当たり的~

 受け身(場当たり的な)な管理を行っている場合は、初産分娩月齢や初回種付け月齢に注目しているケースが多いのが実情です。例えば、初産分娩月齢が26カ月、目標が24カ月だとすると目標達成にどれくらいかかるでしょうか。おそらく目標達成に1~2年かかります。

 一方、積極的な管理の場合です。例えば未経産牛の離乳時の一日平均増体量を測定し、目標値を大幅に下回っていることに気づいたとします。このステージであればすぐに着手でき、それこそ2、3カ月以内に改善に取り組むことができます。これは、積極的な管理の良い例だと思います。

 未経産牛の管理をする場合、3、4産目の経産牛の体重を測定することで牛群全体における成熟体重を把握します。そして、未経産牛の分娩前体重が成熟体重の95%、分娩後体重が85%を目標とします。

 体重測定は目標達成のための重要なカギとなります。そのため、出生時、離乳時、ワクチン接種時、種付け前後など、イベントなどの節目で行うことをお勧めします。これらの測定結果は、育成管理のどの段階に問題があるかを明らかにするのに有効です。

 離乳後の未経産牛の管理においては、

・達成可能な目標を設定すること

・管理の心構えを身につけること

・意思決定のための情報収集と活用

・必要なものを調達する

 これらのことを意識して管理していきましょう。

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